研究課題/領域番号 |
26220902
|
研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
井上 光輝 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90159997)
|
研究分担者 |
関口 康爾 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (00525579)
後藤 太一 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00721507)
中村 雄一 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20345953)
内田 裕久 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30271000)
高木 宏幸 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40390463)
リム パンボイ 豊橋技術科学大学, 国際教育センター, 准教授 (40502597)
松田 厚範 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70295723)
|
研究期間 (年度) |
2014-05-30 – 2019-03-31
|
キーワード | イットリウム鉄ガーネット / スピン波 / 人工磁気格子 / マグノニック結晶 / フォトニック結晶 / ホログラムメモリ / 三次元ディスプレイ / スピントロニクス |
研究実績の概要 |
本研究は,我々が基盤研究(S)やMEXTキーテクノロジー事業で調べてきた磁性フォトニック結晶や,基盤研究(A)で推進してきたマグノニック結晶などの人工的に構成した磁気的周期構造媒体を総合的に「人工磁気格子」としてまとめた新しい分野の構築を図るとともに,これを光(電磁波)やスピン波(静磁波)などの磁気的波動制御に用いて,人工磁気格子でなければ実現できない新しいデバイスを実現しようとするものである。 スピン波人工磁気格子については,[J. of Phys. D, 50, 275001 (2017)]において,単結晶のイットリウム鉄ガーネットを用いたデバイスについて詳細に報告した。スピン波人工磁気格子を前進体積モードに適用し,マグノニックバンドギャップの発現を世界で初めて確認している。 光波人工磁気格子については,磁気ホログラムメモリ応用を目指しホログラム書き込みパターンを工夫することで,再生エラーを0に抑えられる事を示した。さらに,磁場アシストを加えることで,書き込みパワーを抑制できることも示した。これらは計算では当初から予測されていたが,本科研費によって初めて実験によって確かめることができた成果と言える。詳しくは,[Opt. Express, 25, 15349 (2017)]や,[Sci. Rep., 7, 12835 (2017)]に記載した。 3次元ディスプレイを目指した光波人工磁気格子としては,3次元ディプレイの視野角を広げることができる人工磁気格子の設計を行った。 その他,ランダムな人工磁気格子を用いたデバイスとしてレーザーのQスイッチ[Sci. Rep., 7, 15398 (2017)]等を実験によって性能を示した。人工磁気格子を軸にした,新デバイス,新材料の開発も進んでいる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
人工磁気格子は周期性の高い,構造でしか,高い性能を得られないと考えていたが,いわゆるランダムな構造も,「ランダムな格子」として,分類してみると,実に全体をスッキリと物理的に説明がつくことが分かりだした。具体的には,論文で報告したような迷路状の磁気ドメインは,一列にきれいに並んだ構造ではないが,幅,濃淡には,周期がある。これを使うことで,世界で初めて磁気光学効果を使った強磁性Qスイッチレーザーの開発に成功した。磁気ドメインを外部磁場で制御する方法は,磁気とレーザーの融合として,極めてシンプルであるが,レーザー50年の歴史の中で行われた例は皆無であった。プレス発表等多数行われた。 その他に,フォノン(熱波)の挙動を周期構造で制御することで,スピンゼーベック効果を増大できることを見出した。周期性のことなる媒体を複数用意し,そのスピンゼーベック効果で発現する電圧を比較すると,周期性があがるにつれて,電圧が増加することが分かった。以上より,当初予定よりも進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
光人工磁気格子を用いた3次元ディスプレイは,精細度の向上,大画面化を引き続き行う。 スピン波人工磁気格子は,引き続き,極薄単結晶膜を用いた,機能のデモンストレーションを目指し,スピン波伝搬基礎特性を測定し,ロジック回路等のデバイス開発を進める。 さらに,ここまでに得られた結果を元に,国際連携研究を推進していくことを引き続き予定している。
|