研究課題/領域番号 |
26220907
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
細田 秀樹 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (10251620)
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研究分担者 |
上杉 徳照 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (10405342)
曽根 正人 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (30323752)
稲邑 朋也 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (60361771)
田原 正樹 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (80610146)
舟窪 浩 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (90219080)
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研究期間 (年度) |
2014-05-30 – 2019-03-31
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キーワード | 形状可変材料 / 形状記憶合金 / 圧電材料 / ホモ界面 / ドメイン構造 / 相安定性 / 第一原理計算 / 微小材料試験 |
研究実績の概要 |
H28年度は,引き続き研究項目(1)ホモ界面幾何学,(2)相安定性とホモ界面,(3)ホモ界面・ドメイン構造および(4)力学特性・圧電特性について研究を行った.項目(1)については,H27年同様,立方晶-斜方晶および立方晶-単斜晶変態における形状記憶合金のホモ界面の幾何学を非線形連続体力学による数値解析でねじれの存在するホモ界面種を理論的に同定した.その結果,特定のねじれが完全に消滅する格子定数比が存在することを見出した.これにより,摩擦ゼロの材料設計指針が確立できた.項目(2)については,Ti-Nb,Ti-Mo合金のα"相とβ相の相境界近傍での第一原理計算により相安定性と変態ひずみに及ぼす第三元素の影響を定量的に評価し,形状可変材料の変態ひずみの向上のための合金設計を可能にし,H29年度にこの検証を行うこととした.また,TiNi, PtTi, AgCdなどの金属間化合物についても第一原理計算により評価した結果,相定性と変態温度に相関性を見出し,合金に寄らない普遍的な設計原理を提示できた.項目(3)については,ホモ界面・ドメイン構造を静的/動的に解析し,ねじれが実在すること,ねじれた界面は成長するドメイン同士の衝突によって生じ,核形成の起点となるホモ界面にはねじれが存在しないことなどを初めて明らかにした.また,圧電材料では,XRDによる結晶構造の直接観察から,ナノ秒までの高速応答が可能であること,分極処理により大きなホモ界面の移動とそれに伴うドメイン構造変化が起きることを明らかにした.項目(4)では,応力下においては,ねじれたホモ界面の易動度が,ねじれのない場合に比べて低くなることをSEM内in-situ引張試験によって実験的に解明し,本研究の着眼点の妥当性を示すことができた.また,これらの研究で開発できた新材料の特性解明をH29年度にさらに進めることとした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現状,研究面ではほぼ全て予定通り進行し,ほぼ全項目で想定通りあるいはそれ以上の研究結果が得られている.また,既に高機能化をTi-Nb系,Ti-Mo系およびTi-Cr系合金でも第一原理計算による相安定性に及ぼす第三元素の影響の調査や格子軟化挙動の計算評価が順調に進み,かつ,第一原理計算と実験的結果がうまく両輪として回り,有効な知見が得られている.これらの成果として,実用化に直結する原理・現象・材料の発見があり,新学理の追究を進めている.これらの成果から,卓越した性能を有する形状可変材料が発見されつつあり,これらを総合し,当初の予想以上に研究が展開できているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
現状,当初の研究計画からの大きな変更は無い.H29年度は,主にH28年度より進めている項目(4)ホモ界面ダイナミクスの学理の進展を図り,新規形状可変材料の機能発現とその向上を狙う.既に,ねじれたホモ界面の易動度がそうでない界面に比べて低いことなど当初の予想通りの結果が得られている.また,圧電材料では非鉛圧電体への展開も考えており,これにより鉛系を超える特性の材料開発も期待できる様になっている他,ドメイン群の制御の方針が得られている.また,微小材料の機械試験も想定以上に進んでいる.想定以上に追加する研究としては,Ti-Nb系,Ti-Mo系,Ti-Cr系での第一原理計算がかなり進み,実験と十分対応させて進めることできるようになったことを踏まえ,第一原理計算上,特異点といえる合金組成が存在する可能性が指摘されたことから,この検証を行うこととした.これは,金属系材料における機能性発現における第一原理計算の有効性の検証にもなると考えている. 研究グループとして,共同研究者稲邑朋也准教授がJSPS国際共同研究加速基金に採択され,Oxford大学のBall教授研究室に留学することとなった.このため本プロジェクトに関してBall教授の協力による理論研究がさらに進むことが期待できる.なお,稲邑准教授の留学に伴う実験への影響であるが,連携研究者としてH27年度より篠原百合助教,およびH29年度より海瀬晃助教が参画し,Ti系合金やAuCuAl系合金微小試験によるドメイン移動応力の研究を進めるため,実験への支障はなく,さらなる進行が期待できる.変更点としては,格子軟化現象については,中性子回折実験の代わりに第一原理計算主体で進めることを予定している.さらに,新材料開発が進んだため,連携研究者金高弘恭准教授らと医療やエネルギー応用についても検討する予定としている.
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