研究課題/領域番号 |
26220908
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
能木 雅也 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (80379031)
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研究分担者 |
柳田 剛 大阪大学, 産業科学研究所, 招聘教員 (50420419)
長島 一樹 大阪大学, 産業科学研究所, 特任助教(常勤) (10585988)
古賀 大尚 大阪大学, 産業科学研究所, 特任助教(常勤) (30634539)
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研究期間 (年度) |
2014-05-30 – 2019-03-31
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キーワード | ナノセルロース / セルロースナノファイバー |
研究実績の概要 |
本年度は、下記3つの課題に取り組みながら、セルロースナノペーパーを用いた不揮発性メモリの開発を行った。以下に、それぞれの目標と実績を記す。 1.ナノファイバーソースの選定【目標】メモリデバイスに適したセルロースナノファイバーならびにナノペーパーの開発を行うために、針葉樹・広葉樹などの樹種による違いや精製方法、各種変成処理の検討を行う。【成果】当該研究課題においては、樹種による有為な差異は認められなかった。また各種変成処理の開発も順調に行っている。これらの成果は国内学会2件、国際学会3件で発表し、論文準備中である。 2.ナノペーパー基板へのメモリ搭載技術の開発【目標】ReRAMは、電極に挟まれた絶縁層が基板のうえに搭載されている。そこで、ITOや金属電極ならびに絶縁層をナノペーパー基板へ搭載する技術を開発する。【成果】搭載技術を開発し、銀ナノ粒子を担持させたナノセルロースを用いたペーパーメモリの開発に成功した。これらの成果は、国内学会1件、国際学会3件で発表し、Scientific Reportにて論文発表を行った。 3.ナノペーパ絶縁層の開発【目標】ナノペーパーを基板だけでなく絶縁層にも応用展開するために、電気抵抗変化現象を評価しながらナノペーパー絶縁層を開発する。【成果】ナノペーパーの絶縁性を評価した。さらに高誘電率材料としての可能性を見いだすことにも成功した。これらの成果は、国内学会2件、国際学会2件で発表し、Advanced Materialsにて論文発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、以下2点において当初の計画以上の進展があった。 【課題2 メモリ搭載技術の開発】研究開始当初、メモリ搭載技術の開発において幾つかの困難な課題が予想されていた。重点的な研究打ち合わせを頻繁に行うことで、それらの課題を解決することに成功した。その結果、メモリ搭載技術の開発に留まらず、ペーパーメモリの試作まで達成した。試作したペーパーメモリは、6桁のオンオフ抵抗比・小さなスイッチング電圧分布など非常に安定した不揮発性メモリ特性を示した。そして、直径1mm以下の細い棒へ巻き付けても、高いメモリ特性を保持した。この研究成果は、Scientific Reportsにおいて論文発表を行った。 【課題3 ナノペーパ絶縁層の開発】ナノペーパーの絶縁性評価を実施し、その結果に関して研究分担者とディスカッションを行ったところ、高誘電率という新たな特性が見つかった。さらに、銀ナノワイヤとの複合化など新たな技術開発を行い、フレキシブルな高誘電率材料の開発に成功した。この高誘電率ナノペーパーは、デバイスの小型化や薄膜化、さらにはリーク電流の大幅な削減による省エネデバイスなどを実現しうる画期的な材料である。この研究成果は、Advanced Materialsにおいて論文発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までの研究課題において、金属ナノ粒子を担持させたナノセルロースを用いたペーパーメモリを開発し、ペーパーメモリの可能性を示すことができた。今後は、下記の研究課題に取り組み、新たな不揮発性ペーパーメモリの提案を行う予定である。 ○ナノペーパーを絶縁層に用いたメモリの開発:本年度の実績を更に発展させて、ナノペーパーの微細構造を制御して金属ナノ粒子を用いないペーパーメモリの開発に取り組む。 ○多様なメモリ実装技術に対応できるナノペーパー基板の開発:高温・定圧雰囲気や多種多様な試薬を用いたメモリ実装プロセスに耐えうるナノペーパー基板の開発を、本年度の実績2を更に発展させて取り組む。 ○金属電極と高い密着性を有するナノペーパーの開発:本年度は非常に柔軟なペーパーメモリの開発に成功した。今後は、折り畳み可能なペーパーメモリの開発に向けて、金属電極へ密着性の高いナノペーパーの開発に取り組む。
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