研究課題/領域番号 |
26220913
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
橋爪 秀利 東北大学, 工学研究科, 教授 (80198663)
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研究分担者 |
江原 真司 東北大学, 工学研究科, 准教授 (30325485)
伊藤 悟 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60422078)
遊佐 訓孝 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60466779)
柳 長門 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (70230258)
田村 仁 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (20236756)
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研究期間 (年度) |
2014-05-30 – 2019-03-31
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キーワード | プラズマ・核融合 / 超伝導材料・素子 |
研究実績の概要 |
本研究は核融合炉実現に不可欠となる先進的分割型高温超伝導マグネットの実証を目的とする。以下、本年度に得られた実績をまとめる。 1) 接合部極限性能予測手法の開発: 生体の元素分布評価に用いられている2色X線CT撮影法(低原子番号元素分析に限定)を高原子番号元素の分析用に独自に拡張して、接合部非接触領域と考えられる部分の元素分析を行う体系を構築した。また、数値計算による渦電流探傷法の適用の検討に新たに着手した。また接合抵抗の磁場角度依存性の詳細データの取得を行い、接合面に平行である角度前後のみで、磁場上昇による接合抵抗の著しい増加が観測されることを確認した。 2) 超伝導物理に基づく機能分割構造導体の設計: REBCO高温超伝導線材内に陽子線照射により人工ピン分布を生成し、同線材の臨界電流を77 K、自己磁場において評価した。また、同線材の積層導体を製作し、同様に臨界電流を評価した。線材レベルにおいては仮説を支持する結果が得られたが、積層導体にした場合には現状の条件では、臨界電流は通常の導体と同等であった。 3) 多孔質体を利用した冷却システムの性能予測と分割流路設計: これまで用いてきたブロンズ粒子焼結多孔質体に加え、銅粒子焼結多孔質体を用いて液体窒素の沸騰曲線を取得し、伝熱相関式に多孔質材料依存性を取り入れた。また、冷媒のサブクール度依存性を考慮して、伝熱相関式を修正した。 4) 100 kA級のモックアップマグネット製作による分割型高温超伝導マグネット総合設計と実証: 曲率を持つ導体の機械的接合の検討にも着手した。導体を直線状に接合してから曲げを施した場合、接合部強度がREBCO線材強度よりも高いことを示した。また、絶縁層を導入した10 kAプロトタイプ導体の接合サンプルの試作を行い、接合抵抗が線材の接合サンプルと同等になることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1) 接合部極限性能予測手法の開発:当初予定していなかった2色X線CTによる接合部検査に着手できており、一定の成果を得ている。極低温/強磁場環境下での接合性能(接合抵抗の温度・磁場依存性)のメカニズムの解明についても磁場方向依存の詳細モデル化を残すのみとなっており、計画以上に進展している。 2) 超伝導物理に基づく機能分割導体の設計:陽子線照射によるREBCO線材への人工ピン分布生成および臨界電流評価も進んでおり、おおむね順調に研究が進展していると言える。次年度以降も、予定通り温度・磁場を変えての臨界電流評価、および理論に基づく最適化設計を進めることになっている。 3) 多孔質体を利用した冷却システムの性能予測と分割流路設計:性能予測については伝熱相関式に多孔質材料、サブクール度を導入して高度化できており、予定通りの進捗状況である。 4) 100 kA級のモックアップマグネット製作による分割型高温超伝導マグネット総合設計と実証:予定通り曲げ導体の接合手法開発に取り組み、機械的接合法の優位性を示すことができた。また絶縁技術を新たに導入したプロトタイプ導体を製作することに成功した。さらに同プロトタイプ導体の製作にあたり、接合熱処理手法を新たに導入し、製作期間の短縮化、接合抵抗の安定的低減も実現することがでた。総合して、研究・開発が計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
1) 接合部極限性能予測手法の開発:2色X線CTによる接合面非接触領域の元素分析、渦電流探傷法による接合面状態の評価(コイル形状・配置最適化、磁場評価)、ホール係数測定によるひずみ分布測定(接触圧力分布測定)の3点に主にしぼって、常温での非破壊検査手法確立を目指す。また、接合抵抗の磁場角度依存性の詳細評価を通して、接合面に平行磁場をかけた場合の接合抵抗の異常上昇の原因分析を行う。 2) 超伝導物理に基づく機能分割構造導体の設計:REBCO線材に陽子線照射を行い、照射欠陥(人工ピン)分布/照射量と線材および積層導体の臨界電流の温度・磁場依存性を評価する。 3) 多孔質体を利用した冷却システムの性能予測と分割流路設計:強制対流沸騰およびプール沸騰のデータの取得を行い、強制対流、核沸騰、核沸騰限界点の伝熱相関式の高精度化を図る。あわせて核沸騰膜沸騰共存領域の伝熱相関式の構築にも着手する。さらに分割型高温超伝導マグネットの接合部をモデル化して伝熱解析を行い冷却安定性についてのデザインウィンドウの構築を目指す。また、酸化物絶縁材料の熱的要求を明らかにし、導体・接合部の酸化物絶縁材料配置の技術開発に取り組む。 4) 100 kA 級のモックアップマグネット製作による分割型高温超伝導マグネット総合設計と実証:10 kA級の導体接合サンプルを製作し、液体ヘリウム冷却10 kA通電試験装置を用いて、導体スケール変化による接合性能変化を評価する。また、機械的接合部を有する数10~100 kA級導体を用いたダブルパンケーキコイル(曲げた導体の接合が必要)を製作し、核融合科学研究所の13 T大型超伝導導体試験装置を用いて、低抵抗・通電実証試験を 行う。さらに3Dモデルを用いて、核融合炉のコイル/導体セグメント、電磁力支持構造の検討を行い、分割型高温超伝導マグネットの核融合炉への適用性の評価も行う。
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