研究課題
記憶神経回路の標識については、基軸となるASプローブによる染色特異性の理論基盤を明らかにする論文を発表し、世界中の20以上の研究室からの要望に応えて、コンストラクトを配布しており、その通常の応用は他のラボに任せたい。我々はASプローブの、色々は改良を行い、更に、革新的な展開をする作業を進めてきた。例えば、改良版ASでは、スパインの収縮を非常に早く起こすことができることがわかった。また、ASに基づいて、記憶回路を標識する作業を進めた結果、二つの具体的な問題があることがわかってきた。一つは、シナプスの同定であり、もう一つは、周密な軸索による回路の光学顕微鏡による分離である。前者については、アクティブゾーンのFRET/FLIM法による同定と組みあわせることで達成が可能になると考えられ、検証を進めている。軸索の周密性につていは、透明化の脳の観察を進めた結果、光学顕微鏡を用いた唯一の解決策があることに気づき、その方向でプローブの合成や、顕微鏡の再構築を進めている。シナプスのアクティブゾーンではFRET/FLIM法で高い複合化が検出されることを報告したが、この際、SNARE蛋白は特殊な多量体構造を取っており、SNARE間のリンカーを長くするとサブミリ秒の開口放出が数十ミリ秒まで遅くなることがわかった。更に、シナプス前終末がスパイン頭部増大で押されるとSNAREの複合化が増すことが確実となってきた。これはsucroseでも起きるだけでなく、細い電極で押すことでも起きた。現在は、これに伴い放出確率が増えることを実測する実験に入っている。
1: 当初の計画以上に進展している
シナプス前部の機能を直接読み出す方法がこれまでなく、その研究は遅れてきた。今回、我々は、SNARE蛋白のFRET/FLIM法を使うことで、これを初めて実現し、シナプス前終末の特殊性や、その力学的調節という予想外の展開を得た。一方、覚醒動物では、スパイン頭部増大が起きており、この様な速い調節が覚醒脳では起きている可能性が高い。更に、記憶シナプスの標識に世界に先駆けて成功し、シナプスレベルだけでなく、大規模な神経回路として学習・記憶を捉える道が拓かれた。
努力の結果新しい地平に到達しているので、これらの知見を確実に発表に結びつけ、更に、大きな研究に展開するように考えていく。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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巻: 525 ページ: 333-338
10.1038/nature15257
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http://www.bm2.m.u-tokyo.ac.jp