研究課題
記憶光プローブについては、ASスパインプローブに加えて、軸索側にも標識を入れを同定することを目標としていた。これには、軸索側のプローブにも神経突起に運ばれるのに有利な配列を入れること、軸索終末局在に有利な配列を付加すること、更に、PEST配列を加えることで、それが可能となるだけでなく、軸索の終末が疎らに標識されることがわかった。これが記憶に関係することはASプローブと組み合わせるのがいいが、この際、蛍光蛋白の種類を変えると個体では障害がでることがわかり、ASプローブと異なる手法でスパインを標的とするプローブの構築を進めることとなった。これらのプローブが完成すると記憶回路の標識や個体脳での学習現象の解明が根本的に変わるので、この軸索およびスパインの新しい標識操作法の開発に集力した。また、大脳皮質だけでなく線条体の学習回路を標識するためにプロモータをSAREから変える必要があり、これにはTet-OFF系を用いたより一般的な方法を見出した。スパイン増大によるシナプス前終末の調節効果については、開口放出の測定にiGluSnFRというグルタミン酸感受性蛋白質を使うことに成功し、放出確率を推定する道が拓かれた。また、Cal520を利用してシナプス後部からも放出を測り、なおかつ、スパイン増大を誘発する条件を出すことに成功した。加えて、軸索を遠位でChrimsonRを用いて光遺伝学的に刺激することにより、安定した刺激を行うことも実現した。こうして、シナプスにおける機械的相互作用を証明することに格段に近づいた。
1: 当初の計画以上に進展している
実績の概要で述べた結果は、沢山の試みをするなかで、発見的に得られた展開であり、挑戦的なテーマの解決に迫るものである。軸索の機能的標識、線条体回路の標識の可能性、シナプスの力学的相互作用解明に向けた新しい方法論の開拓が著しく進んだ。
どの実験も挑戦的であるので、進みは速くはないが、直実な進展を見せている。現在は、研究室の新メンバーを再配置し、技術補佐員を増強するなどして、進展を促進し、発表で世界に遅れない工夫をしていく。
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件、 招待講演 5件) 備考 (1件)
Neurosci Lett
巻: 671 ページ: 99-102
10.1016/j.neulet.2018.02.006
ACS Synthetic Biology
巻: 6 ページ: 1257-1262
10.1021/acssynbio.6b00359
http://www.bm2.m.u-tokyo.ac.jp/index.html