研究課題
脳機能を理解する上で重要であるにもかかわらず知見が乏しかった連合系と行動制御系を結ぶ神経回路を、神経の可視化や機能操作が容易なショウジョウバエを用いて網羅的に同定解析するコネクトミクス研究を行った。脳上部に位置し連合中枢との情報入出力や行動制御中枢への情報出力を行う部位である SMP, SLP, SIP, CRE, CL, LAL 領域、および脳後部に位置し行動制御神経に最も近い位置にある SPS, IB, ATL 領域において、最終的に当初の想定をはるかに上回る890種類の神経の同定に成功した。うち519種類では、非常に高い特異性で遺伝子発現を誘導できる「Split GAL4」系統を樹立した。また、標識された神経の一部をランダムに異なる色で可視化する Multi Color Flip Out法によって、すべての神経種について単一神経レベルで形態を解析した。一部の神経では光感受性チャネル遺伝子を発現させて赤色光で神経刺激を行い、刺激によって行動が活性化したり抑制されたりする神経を見いだした。五感の中で唯一未解明であった体性感覚の情報経路については、昨年度論文発表した研究をさらに進めて、一次感覚神経のサブタイプ特異的な投射パターンと、胸腹部神経節から脳に伸びる体性感覚二次介在神経を体系的解析に解析し、体性感覚情報を受容する脳の領域をほぼ全て同定することができた。最後に、以前開発したアルゴリズムを改良してシナプスブートンの位置と数を画像から計測することに成功し、連合学習や行動制御に重要なモノアミン神経のシナプス数を体系的に比較した。老化に伴ってオクトパミン神経ではシナプス数がほとんど変化しないのに対し、ドーパミン神経ではシナプス数が減少するだけでなく、その度合いが脳領域によって大きく異なっており、老化に伴うシナプス減少が神経種特異的、領域特異的に起こることが始めて示された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Comp. Biol. Med.
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