研究課題/領域番号 |
26221003
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
伊佐 正 生理学研究所, 発達生理学研究系, 教授 (20212805)
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研究分担者 |
小林 憲太 生理学研究所, 脳機能計測・支援センター, 准教授 (70315662)
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研究期間 (年度) |
2014-05-30 – 2019-03-31
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キーワード | 盲視 / 部分的意識 / 霊長類 / 大規模回路記録 / 上丘 / 膝状体外視覚経路 / 皮質脳波 / 一次視覚野損傷 |
研究実績の概要 |
一次視覚野損傷を行ったサルにおいて視覚誘導性サッケード運動を行っているサルのサッケード運動関連脳賦活をPETによって観察したところ、損傷前は一次視覚野を中心とする初期視覚野やSTP野、そして前頭眼野の腹側部を中心に賦活が見られたのに対し、片側損傷回復後は、損傷側では上丘ー視床枕に活動の上昇が観察され、さらに頭頂連合野LIP野や背外側前頭葉皮質に両側性に活性化がみられ、盲視における視覚運動変換系の概要がわかってきた。とくに初期視覚処理段階において、外側膝状体からMT野への投射経路が重要であるという説(Schmid et al. 2010)が最近出されているが、我々は、上丘から視床枕を介してLIP野へ投射する経路が重要であると考え、視床枕にムシモルを注入すると、サッケードは顕著に障害された。また、ウィルスベクター2重感染法によって上丘ー視床枕経路を可逆的・選択的に遮断してもサッケードの成功率は低下した。これらの結果から、盲視における視覚情報処理に少なくとも一部は上丘ー視床枕経路が関わることを証明できた。 さらに、このようなサルに視覚的な意識が生じているかどうかを解析するため、Yes-No detection課題を行い、行動データを信号検出理論を用いて解析したところ、盲視においてはsensitivityの低下が見られ、これは健常視野における閾値付近の視覚刺激に対する応答とは異なること、そしてこの結果は視覚的意識が生じていないヒトの盲視患者の所見と類似していることから、一次視覚野損傷による盲視サルも視覚的意識を有していないことが明らかになった。 また、全脳記録用の多チャンネル(192ch)ECoG電極を試作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
盲視における視覚運動変換系の脳機能イメージングによる可視化、信号検出理論による視覚的意識の解析が順調に進捗した。さらに全脳記録用の多チャンネル(192ch)ECoG電極を試作することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、サルにおける全脳型ECoG電極(既に作成済み)をサルに慢性的に埋め込み、視覚運動性サッケード課題やYes-No detection課題遂行中の脳活動を記録し、解析する手法を確立する。どの後、一次視覚野を損傷して盲視モデルとし、部分的意識が生じる場合と生じない場合の違いを全脳的な回路ダイナミクスの違いとして理解する研究を推進する。
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