研究課題/領域番号 |
26221105
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
角谷 徹仁 国立遺伝学研究所, 総合遺伝研究系, 教授 (20332174)
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研究期間 (年度) |
2014-05-30 – 2019-03-31
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キーワード | エピジェネティクス / DNAメチル化 / シロイヌナズナ / クロマチン |
研究実績の概要 |
「ヘテロクロマチン制御様式と発生への影響の理解」 クロマチンリモデリング因子DDM1の変異下では、ヘテロクロマチンにおいてDNAメチル化が低下する、一方、少数の配列で逆にDNAメチル化が上昇し、これがいくつかの発生異常を誘発することを報告している(EMBO J 2007, Plant J 2012)。ゲノムワイドのDNAメチル化解析を行い、このようなDNAメチル化の誘発される配列を数百同定した。これらの配列は、DNA脱メチル化酵素遺伝子IBM1の標的とは異なるが、下流にヘテロクロマチン配列を持つ傾向があった。興味深いことに、野生型の背景でもddm1変異由来の染色体を持つ個体では、DNAメチル化の上昇がトランスに誘発され、ゲノムワイドでヘテロクロマチン量を補正する負のフィードバップ機構の存在が示唆された(PLOS Genetics, in press)。
「新奇DNA脱メチル化の分子機構理解」 DNA脱メチル化効果を持つタンパク質VANCは、末端の逆位反復配列の崩れたDNAからトランスポゾンの解析を進める中で見いだした新奇因子である(Fu et al 2013 EMBO J)。VANCを発現させると、一群のトランスポゾンで全長にわたる脱メチル化が誘発される。標的トランスポゾンに対してVANCは大きな効果を持つが、興味深いことに、この効果は特異的で、配列の類似した一群のトランスポゾンのみで観察される。一方、VANCと構造の似た因子は末端逆位配列の崩れたトランスポゾンに広く分布する。そこで、VANCでは影響を受けないトランスポゾンの持つ類似因子4種類をシロイヌナズナで発現させた。その結果、そのうちの1つで特異的転写脱抑制が観察された。これらの形質転換系統すべてでゲノムワイドのDNAメチル化解析とRNA解析を準備している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
抗抑制因子VANCの解析においては、その機能を生体内で調べるための形質転換体の準備を進めている。また、ヒストン脱メチル化酵素IBM1およびその抑圧変異体のRNA解析により、その発生異常を仲介する候補遺伝子を見いだしている。このように本課題は当初の計画どおり進んでいる。さらに、クロマチンリモデリング因子DDM1/LSH変異体のDNAメチル化解析によりゲノムワイドでヘテロクロマチン量を制御する機構の存在を見いだしたことは、期待以上の成果だった(Ito et al PLOS Genetics, in press)。今後はこの新奇現象の理解に向けた研究の進展も期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた計画を進める。また、当初予想していなかった、ヘテロクロマチン形成と個体発生をつなぐ新奇経路に関与する遺伝子を見いだしているので、その解析を進める。本課題の助成により、平成27年度からは本課題に参画する博士研究員と実験補助員を新たに補充することができたので、さらに強力に研究を推進できる。
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