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2015 年度 実績報告書

抑制と抗抑制によるエピゲノム動態制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 26221105
研究機関国立遺伝学研究所

研究代表者

角谷 徹仁  国立遺伝学研究所, 総合遺伝研究系, 教授 (20332174)

研究期間 (年度) 2014-05-30 – 2019-03-31
キーワードエピジェネティクス / DNAメチル化 / シロイヌナズナ / クロマチン
研究実績の概要

「ヘテロクロマチン制御様式と発生への影響の理解」
多くの真核生物に保存された抑制クロマチンの目印であるヒストンH3の第9リジンのメチル化(H3K9me)が異所的に蓄積するシロイヌナズナの変異体ibm1では、さまざまな発生異常が誘発される。H3K9meの下流で働く因子を知るため、H3K9meはかわらず発生異常をサプレスする変異体を選抜し、H3K4脱メチル化酵素遺伝子を同定した。ibm1変異体でH3K9meが上昇し発現が低下する遺伝子の多くでH3K4meが低下すること、またこのサプレッサー変異では、ibm1による発現やH3K4meへの影響がなくなることから、H3K9meがH3K4meの脱メチル化を介して発現や発生の異常を引き起こしていることがわかった(Inagaki et al 論文投稿中)。

「新奇DNA脱メチル化の分子機構理解」
DNA脱メチル化効果を持つタンパク質VANCは、末端の逆位反復配列の崩れたDNAからトランスポゾンの解析を進める中で見いだした新奇因子である(Fu et al 2013 EMBO J)。VANCを発現させると、一群のトランスポゾンで全長にわたる脱メチル化が誘発される。標的トランスポゾンに対してVANCは大きな効果を持つが、興味深いことに、この効果は特異的で、配列の類似した一群のトランスポゾンのみで観察される。一方、VANCと構造の似た因子は末端逆位配列の崩れたトランスポゾンにに広く分布する。そこで、VANCでは影響を受けないトランスポゾンの持つ類似因子4種類をシロイヌナズナで発現させた。その結果、そのうちの1つで特異的転写脱抑制が観察された。また、ゲノムワイドのDNAメチル化解析の結果、これをコードするトランスポゾンに特異的な低メチル化誘発された。それぞれのトランスポゾンのコードする抗抑制因子が、それぞれ異なる配列に対して特異的な低メチル化と転写脱抑制を行うことが明らかとなった(Hosaka et al論文投稿準備中)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

上述のように研究は計画どおりに進展している。これに加えてさらに、ibm1による発生異常をサプレスする変異から同定された遺伝子はジーンファミリーを作っており、そのそれぞれのメンバーによるヒストン修飾の変化を調べたところ、予想外の特異性を持つ因子が複数みつかった。この予想外の展開は、個体発生のみならず、環境応答におけるヒストン修飾の機能とも関連しており、今後、さらに研究を発展させられると期待している。

今後の研究の推進方策

「ヘテロクロマチン制御様式と発生への影響の理解」
現在論文投稿中の因子に加え、新たな働きを持つ因子と他の遺伝子との遺伝的相互作用を調べるとともに、これらの因子の局在や変異体クロマチン解析をゲノムワイドに行うことで分子機構の理解につなげたい。また、これらの解析を個体発生や環境応答の文脈で展開したい。

「新奇DNA脱メチル化の分子機構理解」
抗抑制因子の進化とともに、その標的の進化についても解析を行い、進化様式を明らかにしたい。また、これらの抗抑制因子と相互作用するタンパク質を探索しており、有力な候補がみつかった場合はその機能を調べることで、この配列特異的抗抑制における宿主因子の関与について検討したい。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] A Stress-Activated Transposon in Arabidopsis Induces Transgenerational Abscisic Acid Insensitivity2016

    • 著者名/発表者名
      Ito H, Kim JM, Matsunaga W, Saze H, Matsui A, Endo TA, Harukawa Y, Takagi H, Yaegashi H, Masuta Y, Masuda S, Ishida J, Tanaka M, Takahashi S, Morosawa T, Toyoda T, Kakutani T, Kato A, Seki M.
    • 雑誌名

      Sci Rep.

      巻: 6 ページ: 23181

    • DOI

      10.1038/srep23181.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Genome-wide negative feedback drives transgenerational DNA methylation dynamics in Arabidopsis.2015

    • 著者名/発表者名
      T Ito, Y Tarutani, TK To, M Kassam, E Duvernois-Berthet, S Cortijo, K Takashima, H Saze, A Toyoda, A Fujiyama, V Colot, T Kakutani
    • 雑誌名

      PLOS Genetics

      巻: 11 ページ: e1005154

    • DOI

      10.1371/journal.pgen.1005154.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] DNA Methylation within Transcribed Regions.2015

    • 著者名/発表者名
      To TK, Saze H, Kakutani T
    • 雑誌名

      Plant Physiol

      巻: 168 ページ: 1219-1225

    • DOI

      10.1104/pp.15.00543.

    • 査読あり
  • [学会発表] トランスポゾンによる配列特異的な抗抑制の進化2016

    • 著者名/発表者名
      斎藤絡、高嶋和哉、伊藤佑、樽谷芳明、角谷徹仁
    • 学会等名
      第57回植物生理学会
    • 発表場所
      岩手大学上田キャンパス
    • 年月日
      2016-03-18 – 2016-03-18
  • [学会発表] Evolution of sequence-specific anti-silencing by transposable elements in Arabidopsis2016

    • 著者名/発表者名
      角谷徹仁
    • 学会等名
      染色体OS-国際シンポジウム
    • 発表場所
      淡路夢舞台国際会議場
    • 年月日
      2016-03-02 – 2016-03-02
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] シロイヌナズナのDNAメチル化とエピジェネティックな遺伝2015

    • 著者名/発表者名
      角谷徹仁
    • 学会等名
      第38回日本分子生物学会
    • 発表場所
      神戸ポートアイランド
    • 年月日
      2015-12-01 – 2015-12-03
  • [学会発表] シロイヌナズナの世代を越えたDNAメチル化動態において働くゲノム規模での負のフィードバック2015

    • 著者名/発表者名
      伊藤佑、樽谷 芳明, 藤 泰子, 高嶋 和哉, 佐瀬 英俊, 豊田 敦, 藤山 秋佐夫, 角谷 徹仁
    • 学会等名
      日本遺伝学会第87回大会
    • 発表場所
      東北大学
    • 年月日
      2015-09-25 – 2015-09-25
  • [学会発表] Genome-wide negative feedback system for transgenerational DNA methylation dynamics in Arabidopsis2015

    • 著者名/発表者名
      Tasuku Ito, Yoshiaki Tarutani, Taiko K.To, Kazuya Takashima, Hidetoshi Saze, Atsushi Toyoda, Asao Fujiyama, Tetsuji Kakutani
    • 学会等名
      内藤コンファレンス2015
    • 発表場所
      シャトレーゼ ガトーキングダム 札幌
    • 年月日
      2015-09-16 – 2015-09-16
    • 国際学会
  • [学会発表] Genome-wide negative feedback system for transgenerational DNA methylation dynamics in Arabidopsis2015

    • 著者名/発表者名
      Tasuku Ito, Yoshiaki Tarutani, Taiko K.To, Kazuya Takashima, Hidetoshi Saze, Atsushi Toyoda, Asao Fujiyama, Tetsuji Kakutani
    • 学会等名
      Gordon Research Conference "Epigenetics"
    • 発表場所
      Bentley University, Walthom, MA, USA
    • 年月日
      2015-08-02 – 2015-08-07
    • 国際学会
  • [学会発表] シロイヌナズナの継世代的DNAメチル化動態においてはゲノム規模での負のフィードバック が働く2015

    • 著者名/発表者名
      伊藤佑、樽谷 芳明, 藤 泰子, 高嶋 和哉, 佐瀬 英俊, 豊田 敦, 藤山 秋佐夫, 角谷 徹仁
    • 学会等名
      第9回日本エピジェネティクス研究会
    • 発表場所
      一ツ橋大学一ツ橋講堂
    • 年月日
      2015-05-24 – 2015-05-26

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公開日: 2017-01-06  

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