研究課題/領域番号 |
26221204
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
吉田 稔 独立行政法人理化学研究所, 吉田化学遺伝学研究室, 主任研究員 (80191617)
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研究分担者 |
新家 一男 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 上級主任研究員 (20251481)
中尾 洋一 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (60282696)
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研究期間 (年度) |
2014-05-30 – 2019-03-31
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キーワード | 天然生理活性物質 / 標的分子 / エピジェネティクス / 合成致死遺伝子 / 分子間相互作用 |
研究実績の概要 |
本研究では、新しい化合物-標的相互作用検出技術を開発し、あらゆる化合物の標的分子を迅速、組織的に同定する系を構築することを目的とする。それを基盤に未解明の天然物の作用機構を解明すると同時に、標的分子の機能に迫る。また、合成致死の概念をもとに、疾患原因遺伝子から治療標的遺伝子を同定し、新しい治療戦略を確立することを第二の目的とする。そのため、(1)多剤超感受性分裂酵母を用いた標的分子同定技術の開発、(2)Pooled shRNAウイルスライブラリーを用いた標的分子同定技術の開発、(3)二分子蛍光補完法(BiFC)による相互作用因子同定技術の開発、および(4)新規活性物質の探索と作用機構解析を中心に研究を進めた。(1)では、分裂酵母遺伝子破壊株を用いたケミカルゲノミクスプロファイリングのための条件を確立するため、バーコードシークエンスによる増殖定量法の最適化を行った。(2)では、バーコード付きpooled shRNAライブラリーを用いてウイルスにパッケージングを完成させ、複数サンプルを1レーンで解析できるように、マルチプレックスバーコードシークエンス法の確立を行った。この方法を用いて、標的既知の化合物の感受性規定遺伝子のスクリーニングを行い、検証した。(3)では、スクリーニングに用いる蛍光タンパク質を選択する目的で、Fos/Jun複合体形成およびrapamycin依存的なFKBP12/FRB複合体形成によるBiFCシグナルを評価した。その結果、良好なシグナルを示した変異型Venusを用いてライブラリーを作成することとした。(4)では、細胞膜ステロールに結合する抗生物質の作用にエンドサイトーシスとエキソサイトーシスによる膜の脂質輸送が重要であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分裂酵母遺伝子破壊株、動物細胞用shRNAのそれぞれにおいて、バーコードシークエンスによる増殖定量系のための条件検討がほぼ完了した。また、BiFCのための蛍光タンパク質の選定が完了し、大規模スクリーニングのためのヒトcDNAクローニングのステップへ進むことが可能になった。また、膜ステロールに結合する抗生物質の作用機構を解明するため、感受性規定因子を解析した結果、膜脂質の輸送が重要であることを明らかにしたため。
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今後の研究の推進方策 |
分裂酵母遺伝子破壊株ライブラリー、動物細胞用Pooled shRNAライブラリーのそれぞれにおいて確立されたバーコードシークエンスによる増殖定量系を用いて、実際の化合物を用いたパイロット実験を実施し、系の有効性を検証するとともに改良点を見いだす。また、BiFCを用いた相互作用解析技術については、ゲートウェイ化されたヒトcDNAライブラリーから融合タンパク質発現ライブラリーの準備へと進むとともに、スリーハイブリッドシステム用のハイブリッド化合物の設計に着手する。Pooled shRNAライブラリーによる高速スクリーニングの有用性が確立された段階で、遺伝子欠損型の疾患細胞を用いた治療標的遺伝子のスクリーニングや、化学療法における併用効果のための創薬標的のスクリーニングも試みる。
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