研究課題/領域番号 |
26221301
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川端 猛夫 京都大学, 化学研究所, 教授 (50214680)
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研究分担者 |
古田 巧 京都大学, 化学研究所, 准教授 (30336656)
上田 善弘 京都大学, 化学研究所, 助教 (90751959)
吉田 圭佑 京都大学, 化学研究所, 特定助教 (20709779)
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研究期間 (年度) |
2014-05-30 – 2019-03-31
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キーワード | 糖 / ペプチド / 超分子 / 分子認識 / 不斉合成 / 遠隔位不斉誘導 / 配糖体天然物 / 逆合成 |
研究実績の概要 |
従来、多官能基性化合物の位置選択的官能基化は基質の反応性に準拠した保護-脱保護法によって行われてきた。本研究では触媒分子による精密分子認識に立脚した多官能基性化合物の直接的な位置選択的変換法を開発する。本研究は、官能基変換の化学を中心軸として発展してきた合成化学を、分子の全体構造を見据えた“真の意味での分子変換の化学”へと進化させ、合成法の革新を目指すとともに、動的分子認識の観点から有機化学の深化を図るものである。これまでに、無保護グルコースを用いる立体選択的グリコシル化法を開発し、その反応機構がSN2型であることを明らかにした。本法を用いる配糖体天然物、strictinin、tellimagrandin II、及びpterocarinin Cの短段階全合成を達成した。また、無保護前駆体への最終段階位置選択的官能基化という、従来の逆合成解析にはない方法により、糖体天然物 mutifidoside C の全合成を達成した。 本年度は遠隔位不斉誘導法開発の観点から、σ-対称-1,7-ジアミンの高度に選択的な不斉非対称化を達成した。また、ポロジカルキラリティーを持つラセミ体ロタキサンの不斉アシル化による高度な不斉識別に成功した。また、ペプチドの位置選択的官能基化の観点から、ジペプチド類の位置選択的不斉 α-フッ素化法を開発した。位置選択的 C-C 結合形成反応に関しては、ジエノンを基質とする aza-Morita-Baylis Hillman 反応の位置選択性を触媒により制御することにすでに成功しているが、本年度はその不斉触媒化に着手した。位置選択的 C-H 活性化反応の開発を目指し、Rh二核錯体を用いる位置選択的 C(sp2)-H アミノ化反応を見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下記(1)ー(6)の設定目標を達成した。 (1)coriariin A の全合成:無保護グルコースを用いるβ-選択的グリコシル化法をすでに開発しているが、本法をマンノースを含むピラノース類に一般化し、さらに本法を用いる巨大配糖体天然物 coriariin A の無保護グルコースからの短段階全合成を達成した(論文投稿中)。しかし本全合成ではグルコースへの保護基を一部、使用していた。本年度はさらに、2つのガロイル基の同時位置選択的導入に初めて成功し、グルコースへの保護基を全く使用しない全合成達成に向けての鍵段階をクリアーした。(2)遠隔位不斉誘導:σ-対称-1,7-ジオールの不斉非対称化の実績に基づき、さらに困難とされるσ-対称-1,7-ジアミンの高度に選択的な不斉非対称化を初めて達成した。また、σ-対称-1,n-ビスフェノール類の触媒的不斉ハロゲン化による不斉非対称化の端緒をつかんだ。(3)超分子の不斉合成:ポロジカルキラリティーを持つラセミ体ロタキサンの不斉アシル化による高度な不斉識別に成功した。(4)ペプチドの位置選択的官能基化:ジペプチド類の位置選択的不斉 α-フッ素化法を開発した。不斉エポキシ化触媒を開発し、ジエン類の触媒制御による位置選択的不斉エポキシ化の端緒を得た。(5)位置選択的 C-C 結合形成反応:ジエノンを基質とする γ-位置選択的 aza-Morita-Baylis Hillman 反応の不斉触媒化をおこなった(70% ee 程度)。(6)位置選択的C-H活性化反応:Rh二核錯体を用いるアニソール類のパラ位選択的 C(sp2)-H アミノ化反応を見いだした。
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今後の研究の推進方策 |
1)coriariin A の全合成:無保護グルコースを出発とし、グルコースへの保護基を全く使用しない、巨大配糖体天然物coriariin A の全合成を達成する。(2)遠隔位不斉誘導:σ-対称-1,n-ビスフェノール類の触媒的不斉ハロゲン化による不斉非対称化の選択性向上と方法論としての確立をめざす。(3)超分子の不斉合成:ポロジカルキラリティーを持つラセミ体ロタキサンの不斉アシル化による高度な不斉識別法開発の成功を、カテナンの不斉合成法へと展開する。(4)ペプチドの位置選択的官能基化:ジペプチド類の位置選択的不斉α-フッ素化法を一般化する。またジエン類の触媒制御による位置選択的不斉エポキシ化の選択性向上と方法論としての確立をめざす。(5)位置選択的 C-C 結合形成反応:ジエノンを基質とするγ-位置選択的 aza-Morita-Baylis Hillman 反応の不斉選択性向上と、ジエノン類の γ-位選択的官能基化法としての確立をめざす。(6)位置選択的C-H活性化反応:Rh二核錯体を用いるアニソール類のパラ位選択的 C(sp2)-H アミノ化反応をポリフェノール系天然物の晩期官能基化に適用する。また、大きな目標である分子認識側鎖を持つRh二核錯体の開発と、触媒制御による位置選択的 C-H アミノ化に取り組む。
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