研究課題
本研究の目的はアクチン細胞骨格を誘導するRho-mDia経路の①神経可塑性、②T細胞活性化、③精子形態形成、④皮膚のがん化での働きとメカニズムを明らかにし、アクチン細胞骨格がどのようにして組織の恒常性と可塑性に働いているかを明らかにしようとするものである。これまでの研究で、①では、培養神経細胞の活動低下時にmDia1/3がシナプス前終末に蓄積しそこでアクトミオシン束を形成してシナプス前終末を収縮させシナプス伝達効率を低下させていること、慢性社会隔離ストレスに曝したマウス脳側座核神経細胞の腹側被蓋野へ投射シナプス前終末で同様の前終末収縮がmDia依存性に起こり、神経伝達の低下を起こしていること、これが、慢性ストレスによる不安様行動の惹起に関係していることを明らかにした。これは、これまで不明であったシナプス前終末の可塑性の様式を明らかにしたものである。②では、mDia1/3 二重欠損マウスのT 細胞でTCRシグナル伝達障害を見出し、その作用を人工脂質二重膜上でTCRをMHC-agonist peptide 複合体で刺激する系で解析した。その結果、mDiaがTCR microclusterの求心性移動に働きcSMAC形成を促進すること,この過程がTCRからのシグナル伝達を可能ならしめるように働いていることが明らかになった。これは、これまで不明であったTCRシグナル伝達に必要なアクチン細胞骨格の誘導分子を明らかにしたものである。③ では、mDia1/3がセルトリ細胞で働き、精子頭部の形態形成に預かるF-actin hoopや細胞を裏打ちする皮質のアクチン線維の形成に預り、精子との細胞間接着を介して精子の形態形成を遂行しているのが明らかになった。④では、FVBの遺伝背景のmDia1遺伝子欠損マウスでDMBA/TPA塗布による皮膚腫瘍の形成が遅延し、腫瘍数や大きさも減少することを明らかにしている。これらのことから、Ras依存性の皮膚腫瘍発生でmDia1は腫瘍の形成と進展に関与していることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
①の研究については、計画した実験をほぼ終了し論文を作成、投稿した。また、②~④の各研究についても、すでに基礎的知見の裏付けを終え、メカニズムを追求する段階に入っており、あとはどこまで、本質を詰められるかの段階に達している。
①においては計画した実験はほぼ終え論文投稿中であり、審査者のコメントに基づき追加実験を行う。②では、mDia由来のアクチン骨格とTCRおよび下流のシグナル分子のナノスケールレベルでの局在を3次元超解像度顕微鏡法で明らかにする。③ではアクチン繊維の超解像度顕微鏡にmDiaの一分子ライブイメージングを組み合わせてmDiaによって特異的に作られるアクチン線維の同定を行う。④では、mDia1の皮膚特異的欠損マウスでの発がん実験を行うとともに、腫瘍発生におけるmDia1の働きを分子レベルで解析する。
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