研究課題/領域番号 |
26221304
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
高橋 雅英 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (40183446)
|
研究分担者 |
榎本 篤 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (20432255)
浅井 直也 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (80273233)
|
研究期間 (年度) |
2014-05-30 – 2019-03-31
|
キーワード | Girdin / Daple / PEHO syndrome / Hydrocephalus |
研究実績の概要 |
(1)ヒトPEHO-like syndromeにおけるGirdin (CCDC88A)変異の同定(Nahorski et al. Brain 2016) PEHO-like syndromeは小頭症、てんかん発作、手背や足背の浮腫、視神経委縮などを示す常染色体劣性遺伝病である。イギリスの研究グループとの共同研究において、本症候群を示すイギリス人の家系において、Girdin(CCDC88A)遺伝子のgermline変異を世界で初めて同定した。Girdinのコドン2313のTの欠失変異により、772番目のアミノ酸にstop codonが生じ、短縮型Girdinが発現することを証明した(Nahorski et al. Brain 2016)。Girdinのノックアウトマウスにてんかん発作が高頻度に生じることはすでに報告しているが、さらなる表現型の解析により、大脳の大きさの有意な低下や脳梁の低形成が見られることが明らかになり、ヒトのPEHO-like syndromeの患者にみられる表現型と一致した。 (2)Dapleノックアウトマウスにおける脳室上衣細胞の繊毛運動異常と水頭症の発症 Dapleノックアウトを作成し、表現型の解析を行った。形態学的な異常として出生10日目以降に脳室の拡大が顕著になり、水頭症を発症した。走査型電子顕微鏡によりノックアウトマウスの脳室上衣細胞の繊毛運動に異常が見られ、正常上衣細胞の繊毛でみられる方向性のある規則的な運動が観察されなかった。この繊毛の運動能の異常により水頭症が発症するものと推測された。蛍光染色や電子顕微鏡を用いた解析により、ノックアウトマウスでは繊毛基部の構造体であるbasal body(BB)やbasal foot(BF)の配列に異常が観察された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
常染色体劣性遺伝病であるPEHO-like syndrome(小頭症、てんかん発作、手背や足背の浮腫、視神経委縮などを示す)において、イギリスの研究グループとの共同研究により、Girdin(CCDC88A)遺伝子のgermline変異を世界で初めて同定した。 Dapleノックアウトを作成し、表現型の解析により、出生10日目以降に脳室の拡大が顕著になり、水頭症を発症することを明らかにした。走査型電子顕微鏡によりノックアウトマウスの脳室上衣細胞の繊毛運動に異常が見られ、水頭症発症にメカニズムに解明につながる結果を得た。
|
今後の研究の推進方策 |
Girdinの機能解析については、質量分析による結合タンパクの同定をさらに進めることにより、Girdinノックアウトマウスで見られる表現型の発症メカニズムに解明を進める。特に、エンドサイトーシスに関わる分子との結合については、細胞運動制御機構に密接に関わることから、集中して解析する。 Dapleについては脳室上衣細胞の繊毛運動に異常が生じることから、Dapleが細胞の平面極性をどのように制御するかの解明を進める。特にDapleがチュブリンと結合することを明らかにしているので、Dapleが微小管の伸長を制御しているかどうか、もしそうであるならどのような分子機序により制御しているかを詳細に解析する。
|