研究課題/領域番号 |
26221304
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
高橋 雅英 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (40183446)
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研究分担者 |
榎本 篤 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (20432255)
浅井 直也 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (80273233)
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研究期間 (年度) |
2014-05-30 – 2019-03-31
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キーワード | Girdin / 4F2hcとの / アミノ酸シグナル / mTORC1活性 / チロシンリン酸化抗体 / Tuft細胞 |
研究実績の概要 |
(1)アミノ酸シグナルの制御因子としてのGirdinの機能解析(Plos Biol. 2018) 質量分析法によりGirdinとの結合蛋白としてアミノ酸輸送体LAT1の補助因子4F2hcを同定し、この複合体形成が細胞内のmTORC1活性を負にコントロールすることを明らかにした。両者の結合には、GirdinのMAPKによるリン酸化と4F2hcの細胞内ドメインのユビキチン化が重要であることを示した。Girdin/4F2hc複合体の形成は細胞表面のLAT1の発現量を低下させ、その結果、mTORC1の活性低下が誘導された。同時に細胞内アミノ酸、特にグルタミンとロイシンの濃度低下も誘導されることが判明した。以上の結果は、Girdinと4F2hcとの結合が、mTORC1活性を負に制御することを示している。これまでの多くの研究により、mTORC1の活性化メカニズムは解明されていたが、負に制御するメカニズムは知られておらず、本研究はmTORC1の負の制御メカニズムの1つを明らかにした。 (2)GirdinのY1798チロシンリン酸化が腸管Tuft細胞の特異的マーカーになる(J Histochem Cytochem, 2017) GirdinのY1798チロシンリン酸化を特異的に認識する抗体(pY1798抗体)を用いて、マウスの全身臓器を染色し、その発現を検討した。その結果、本抗体にて腸管のTuft細胞が特異的に染色されることを発見した。今まで知られているTuftマーカーと比較した結果、特異性、感度とも遜色ないか、より優れていることが判明した。今後のTuft細胞に関する研究に有用な抗体として資するものと期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Girdinの新たな結合蛋白としてアミノ酸輸送体の補助因子4F2hcを同定し、その複合体形成がアミノ酸輸送体の細胞表面発現を低下させ、mTORC1活性の低下を誘導することを明らかにした。本研究成果は今まで知られていなかったmTORC1活性を負に制御する機構が存在することを明らかにするとともに、今後詳細なアミノ酸シグナル経路の解明に結びつくものと期待できる。また、mTORC1活性は様々ながん細胞で活性化されていることが報告されており、本研究はがんの新規治療法の開発にもつながる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
Girdinは脳の神経幹細胞、脳腫瘍のがん幹細胞、乳がん細胞などに多種のがん細胞に発現している分子である。アミノ酸輸送体LAT1は正常細胞ではほとんど発現が見られず、やはり多くのがん細胞で発現している。今後、GirdinとLAT1の4F2hcを介した複合体形成のがん細胞における機能解析を進めることにより、がんの新規治療法の開発に資すると考える。特に癌細胞におけるmTORC1活性をGirdinがどのように制御しているのか、明らかにする予定である。
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