研究課題
1.アレルギー性気道炎症を起こす“Pathogenic記憶Th2細胞”の機能維持機構の研究 : (i)Pathogenicityを担う機能分子を同定 : Pathogenic 記憶Th2細胞を用いた網羅的エピジェネティック解析を行い、Pathogeicityを担う新規候補分子を複数同定した。これらの中で、Epidermal Growth FactorファミリーのAmphiregulinおよびTNFファミリーのLIGHTについて特に着目し、遺伝子改変マウスを用いた解析を開始した。並行して、他の候補分子の同定も引き続き行っている。(ii)IL-33/ST2による記憶Th2細胞のPathogenicity誘導に関する解析 : 我々は、IL-33が記憶Th2細胞においてST2発現を増強し、Pathogenic 記憶Th2細胞を誘導すること、IL-33の下流シグナルとしてp38-MAPKが重要であることを同定した(Endo et al. Immunity 2015)。2.ポリコーム及びトライソラックス分子群による記憶Th細胞の機能変換・維持機構に関する解析 : ES細胞、B細胞、ナイーブT細胞、エフェクターT細胞を用いたChIP-Seq法によってT細胞の機能発揮に重要なBivalentな調整を受けている遺伝子群を同定した(Onodera et al. manuscript under revision)。3.記憶Th細胞の形成と維持を担う環境因子(場)の解明 : iBALT中での記憶Th細胞の維持にIL-7産生リンパ管内皮細胞が必須であること、このリンパ管内皮細胞の新規マーカーとしてThy1がマウスおよびヒトで有用であることを明らかにした(Shinoda et al. manuscript under revision)。今後は、iBALTにおける抗体産生細胞の解析を含めた機能解析および機能分子の探索を引き続き行う。〔連携研究者〕千葉大学大学院医学研究院:小野寺 淳 Pathogenicityを担う機能分子を同定、遠藤 裕介IL-33/ST2による記憶Th2細胞のPathogenicity誘導に関する解析、篠田 健太・平原 潔 記憶Th細胞の形成と維持を担う環境因子(場)の解明
2: おおむね順調に進展している
本申請研究では、免疫学領域で残されている一大テーマである免疫記憶(immunological memory)の形成と維持の分子機構に関するプリンシプルを明らかにする目的で研究を遂行している。特に「生体にとって有害な免疫記憶T細胞が分化し長期間維持される分子機構」をクロマチンレベルおよび生体レベルで解明するために、①アレルギー性気道炎症を起こす“Pathogenic記憶Th2細胞”をモデル細胞にして、その形成・機能転換の分子機構およびPathogenicityを担う新規機能分子の同定、②ポリコーム及びトライソラックス分子群による記憶T細胞の機能変換・維持機構、③記憶Th細胞微小環境の解析を分子・細胞・個体レベルで進めている。現在までに、(1)記憶Th2細胞の機能分子として全く報告のないEpidermal Growth FactorファミリーのAmphiregulinおよびTNFファミリーのLIGHTをはじめとするPathogenicityを担う新規候補分子を同定した。アレルギー性気道炎症におけるこれらの候補分子のPathogenicな機能について、各種遺伝子改変マウスを用いて解析を開始した。(2) IL-33は、記憶Th2細胞特異的にST2発現増強を促し、pathogenic記憶Th2細胞を誘導することをマウスおよびヒトの検体を用いた実験で明らかにした。さらに、記憶Th2細胞においてIL-33の下流シグナルとしてp38-MAPKを同定した。(Endo et al, Immunity 2015) (3) ChIP-Seq法を用いた網羅的エピジェネティックデータの蓄積とその解析を遂行した。(4) 非リンパ組織における記憶Th細胞の維持において、リンパ管内皮細胞から産生されるIL-7が必須であることを明らかにした。以上、着実な研究進展が認められており、おおむね順調に進展しているといえる。
我々は、これまでに、IL-33がp38-MAPK系を介して、記憶Th2細胞におけるST2の発現上昇を介してIL-5を多量に産生するPathogenic記憶Th2細胞を誘導することを明らかにした(Endo et al, Immunity 2015)。今後は、この発見に基づいて、IL-33によって誘導されるIL-5以外のPathogenicityを担う機能分子の解析を進めていく。現在、Amphiregulin、LIGHT等の候補分子のアレルギー性気道炎症における役割に関して、遺伝子改変マウスを用いて行っている。さらに、慢性副鼻腔炎患者検体等の患者の病巣サンプルを用いて多重染色組織解析、浸潤リンパ球分画のFACS解析、各分画の遺伝子発現解析などを行うことで、マウスでの基礎研究の結果を患者組織サンプルで検証し、気道炎症の慢性化機構の統合的解明を目指す。ChIP-Seq法による網羅的エピジェネティック解析については、Pathogenic記憶Th2細胞のエピジェネティクス解析を行い、慢性炎症の病態維持のメカニズムを解明する研究を行う。また、Pathogenic記憶Th2細胞の機能エフェクター分子の候補分子がいくつか明らかになり、その機能分子に焦点を当てたポリコーム・トライソラックス遺伝子の制御方法の解明を目指す。環境因子(場)の解明については、慢性アレルギー炎症の肺組織にiBALTと呼ばれている誘導性の肺内リンパ組織様の構造を同定し、iBALT形成におけるIL-7やIL-33の重要性を明らかにした。今後は、これらの分子についてiBALT形成における作用メカニズムの観点から記憶Th細胞微小環境の組織学的解析と、機能分子に対する抗体を用いてiBALTを破壊して慢性炎症を止める制御法を探索する。
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