昨年度は、インフルエンザ感染の系を用いて、先ず、どのようなメモリーB細胞が、どのような過程を経て形成されるかを検討した。本年度は、産生されたメモリーB細胞が、2度目のインフルエンザ感染からの生体防御に必須の役割をしているのかどうか。しているとしたらどのタイプのメモリーB細胞が必要とされるのかを明らかにしようとし、以下の成果を得た。1)先ず最初のインフルエンザ株narita感染で作られた長期プラズマ細胞により産生される抗体(Antibody; Ab)は、同じ株のインフルエンザ感染に必須の役割をしていた。一方、この抗体は、変異インフルエンザ株PR8再感染には、全く効果がなく、一次感染時に形成されたメモリーB細胞が必須であった。2)一次感染時に形成されたメモリーB細胞のなかで、HA蛋白のstem領域に対するanti-stemメモリーB細胞が必須とされ、実際、このメモリーB細胞が最初のnarita感染後産生されること、更にPR8再感染後活性化されることを証明した。3)更に一度胚中心(GC)経験したメモリーB細胞をfate mappingできるマウスを用いて、narita一次感染中に産生されたメモリーB細胞をtomatoでラベルし、PR8再感染をさし、anti-stemプラズマ細胞をみてみると、約75%の細胞がメモリーB細胞由来でtomatoでラベルされていた。すなわち一次感染中にGCを経て作られたanti-stemメモリーB細胞が、PR8再感染によって活性化されることが判明した。4)このanti-stemメモリーB細胞の性質(特にAb)を調べるため、narita/PR8再感染後産生されたプラズマ細胞をシングルで単離して、培養し、そのAbのstemにたいする親和性、及び他のウイルス株(H5N1を用いた)のstem領域にたいする反応性を調べた。コントロールとして、ナイーブB細胞由来のプラズマ細胞も調べた。
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