本研究では、放送映像において特定の事物(人物、場所、商品、特定の資料映像等)の出現頻度やその時間展開等を解析することにより、社会における様々なイベント(景況、スポーツなどの祭典、災害、事件等)に関連する情報をセンシングする基盤技術について検討を行う。具体的には、大規模放送映像アーカイブから事物を自動検出・同定する事物マイニング技術と、放送映像空間における事物の分布の多面的な分析を可能とする社会センシング基盤技術について検討する。特に事物マイニングは挑戦的な課題であり、大局的整合性判定による高精度かつ飛躍的に高速な手法の実現を目指す。 平成27年度は、事物マイニングのため、大量の画像データから物体検索を可能とするためのインデックス構造を構築し、超高速の物体検索を可能とする識別機適応型量子化(Classifier adaptive quantization)を開発し、10万画像からの物体検索をわずか100msで実現するのに成功した。また、放送映像解析結果を統合し、社会センシングを実現する技術として、ニュース映像から抽出した人物間の関係性をグラフ化し、ニュースの効果的な内容把握を実現するアナリティクスシステム、並びに番組視聴率と放送映像内容解析を統合し、番組資料率の顕著な変化の理由を効果的に解析できる視聴者行動マイニングシステムとを実現した。これらにより、放送映像のスケーラブルな解析技術、並びにそれらに基づく効果的な社会センシングの実現を実証した。
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