研究課題/領域番号 |
26240019
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡ノ谷 一夫 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (30211121)
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研究分担者 |
和多 和宏 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70451408)
池渕 万季 国立研究開発法人理化学研究所, その他部局等, 研究員 (20398994)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ミラーニューロン / ジュウシマツ / エピジェネティックス / 投射ニューロン / 聴覚選択性 / 発声選択性 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、2つの課題に集中して研究を進めた。 まず、前年度に確立した逆行刺激法により覚醒時自由行動下および麻酔時における鳥類のミラーニューロンの挙動を計測することである。ミラーニューロンとされる細胞は、鳥類の高次発声制御中枢HVCから大脳基底核の一部であるX野に投射されることがわかっている。麻酔下においてジュウシマツの雄4個体で11の単一ニューロンを同定し、その特性を調べた。これらの単一ニューロンはすべて、他のHVCニューロンに比べて神経応答の持続時間が長く、自己のさえずりの歌の一部に応答した。次に、他のジュウシマツ雄4個体を用いて、上記方法でHVC-X野投射ニューロン(HVCX)であることが確認できた8ニューロンについて、自由行動下で歌をうたっているとき、自分の歌を聴いているときの神経応答を記録した。8つのうち4つは、歌の特定部位をうたう時と、同じ部位を聞くとき、どちらでも応答した。典型的なミラーニューロンと言える。他の4つのニューロンのうち2つは、歌の開始と終わりに応答を見せた。また、残りの2つは歌の複数の箇所で応答した。これらの結果から、覚醒時にはHVCXの約半分がミラーニューロンであることがわかった。 もうひとつの課題は、HVCXを生化学的に同定することであった。HVCXの神経活動を可視化するために、AAV発現系により、HVCX特異的にCa2+ sensing proteinであるGCaMPを発現させることに成功した。さらに、Cre組換酵素をHVCX特異的に発現させることができた。昨年度に報告したゲノムDNA脱メチル化誘導能をもつTET1-触媒領域改変型タンパク質をこの方法によりHVCXに発現させることができ、今後の研究の進展が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミラーニューロンの活動を自由行動下の個体で信頼性高く同定することが可能になり、睡眠時と覚醒時のミラーニューロンの刺激選択性が異なることを発見できた。昨年度開発した無線脳波記録と併せて、今後ミラーニューロンの性質をさらに詳細に解明できる。また、HVC-X野投射ニューロンを分子生物学的な手法で標識することに成功した。これらの成果により、研究の進捗は順調であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
HVC-X野投射ニューロン(HVCX)が発達の過程でどのようにミラーニューロンとしての性質を得るようになるのか、分子生物学的な技術と、神経生理学的な技術を融合させ、同時に詳細な歌行動の変化過程を記録して、解明してゆくつもりである。歌の過程でエピジェネティクスがどう働きミラーニューロンを形成してゆくのか、世界初となる成果を出すことを目指す。
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