研究課題/領域番号 |
26240033
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
溝口 理一郎 北陸先端科学技術大学院大学, サービスサイエンス研究センター, 特任教授 (20116106)
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研究分担者 |
来村 徳信 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (20252710)
古崎 晃司 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (00362624)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 看護マニュアル / オントロジー工学 / 行為分解木 / マニュアルの構造化 |
研究実績の概要 |
1.手順書のバーチャル構造化のためのインデキシング 行為分解木,あるいは従来の手順書を読んでいる途中でリンクをたどる場合にはリンクの種類は一つで良い.しかし,実際にはリンクの意味を用いて探索を知的に支援する,あるいは,手順書全体の構造を把握したり,構造を変更する操作に関連する候補箇所を限定する知的処理が必要となる.例えば,同じ看護手順であっても新人看護師は典型的な手順やその適用事例,リーダークラスの看護師は代替手順や適用条件を重点的に学ぶ必要があり,操作手順では同じ前提条件を持つ異なった複数の操作がある,これらを柔軟に切り替えられるために必要なリンクの種別を検討した結果,解説,事例,補足,技術レベル,前提条件,副作用,禁止条項が必要かつ十分であることを確認した.そして,行為分解木を用いたインデキシングによる,手順書の実質的目的指向構造化のひな形を実現した. 2.タブレットコンピュータのインタフェース設計 大部の手順書のiPad等のタブレットコンピュータへの実装と,目的指向インデックスとタブレットの特徴を最大限に活かした電子化ハンドヘルドマニュアルの実現にとっての最大の障害は画面サイズの制約である.そこで,ジェスチャに基づく操作インタフェース,レンズ機能を実装した.更に,関連ノードへのジャンプ機能,ノードの自動開閉機能を実装した.これによって大きな分解木の閲覧がほぼ支障なく行えることを確認した. 3.目的指向表示と手順指向表示の相互変換 両者の表示モードを容易に行き来できるようにタブレットコンピュータの特徴である位置センサーを活用して,タブレットの縦持ちと横持ちに対応して自動的に表示を切り替える機能を実現した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
構造化のためのインデキシングは当初の計画通り順調に進んでいる.インタフェースの方はどちらかと言えば計画以上の結果が得られている言える.実際,大阪大学医学部看護学科の授業において実際に使用しているため,学生からのフィードバックがあり,改善に直接役立てることが出来ていることがその要因である.もう一つ付け加えるとすれば,看護行為を分解するにあたり,医療に直接関わるゴールとは別に,患者の精神的な満足に直接関わるゴールがあることに気づき,一つの看護行為には二種類のゴールを明示することが有効であることを見いだせたことである.これは新しい年度(H28年度)に進めるべき課題であるが,かなり有望な研究課題であると自負している.
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今後の研究の推進方策 |
これまでは,各行為の上位に位置する行為は一つであることを前提に行為を分解するツールを構築して,実際に利用してきたわけであるが,上述の複数ゴールの概念は,本研究のツールの根本的な変革を迫るものであり,その成果と合わせて今後の研究の新しい展開が期待できる.
今後は,看護行為分解において,精神的満足という新しいゴールを想定したマニュアル知識の構造化を行い,その効果を評価する方向に研究を進めたい.それに付随して分解をサポートするツールの改良も行う予定である.
また,このことは研究のさらなる進展を促進するものであり,対象範囲を看護以外に広げることよりも,この研究の方法論とツールの改善という方向へのシフトの方が望ましいかどうかを来年度検討したい.
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