研究課題/領域番号 |
26240038
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
久野 義徳 埼玉大学, 工学部, 教授 (10252595)
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研究分担者 |
小林 貴訓 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (20466692)
福田 悠人 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (70782291)
加地 大介 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (50251145)
山崎 敬一 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (80191261)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | コンピュータビジョン / 知能ロボット / マルチモーダルインタフェース / オントロジー / エスノメソドロジー |
研究実績の概要 |
研究代表者は介護ロボットの実現に向けて、哲学者と共同でオントロジーを用いて対話を通じて物体を認識する研究と、社会学者と共同で人間とロボットの非言語行動を通じたインタラクションについて研究を行ってきた。前者では、状況に応じて意味の変化する多様な人間の自然言語表現を扱えるオントロジーを構築した。後者では、人間の非言語行動も状況により多様な意味をもつことを明らかにしてきた。そこで、本課題では、前者で検討したオントロジーの枠組をさらに発展させ、後者の非言語行動も加えた介護ロボットの世界を記述するオントロジーを構築し、それをもとに人間の指示を理解し、実際の介護施設で動作するロボットの開発を目指して研究を進めている。 平成29年度は実証試験に使用できるロボットを開発した。研究応募の際の調書では双腕のロボットを購入して利用する計画であったが、予算の関係で購入できなかったため、実際にできる作業は限定されるが、研究成果の検証には十分なものを検討した。介護施設を動き回り、高齢者とインタラクションできるように、移動ロボット(移動台車)の上に人型ロボットが座るという構成にした。作業としては、頼まれたものを運ぶ、飲み物や菓子を配る、介護士を呼びに行く程度を想定している。非言語行動に関しては、ロボットに依頼をしたいと思っている高齢者の認識を中心に検討を進めた。ロボットに用があるときは、手を挙げるような動作をすることが多いが、他の場合にも同様に手が動くことはある。手の詳細な動きや状況からロボットを呼んでいるかを認識する方法を検討した。また、物体の指示には位置関係がよく用いられるので、日本語で特に用いられる表現を中心に開発してきたオントロジーを強化して、様々な表現に対応できるようにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小型の移動ロボット(移動台車)の上に小型のヒューマノイドロボットが乗った形の実証実験用ロボットを開発した。これは計画どおりである。人間と言語および非言語行動を通じて指示を理解することについては、人間とロボットのインタラクションの会議であるRO-MAN2017で発表した。この論文は融合研究に対する賞のThe Distinguished Interdisciplinary Research Prizeで、受賞は逃したが最終3候補の一つに選ばれた。研究について国際的な評価は得られていると考えられる。 自動物体認識の部分は研究の中心点ではないが、実用的なロボットの実現のためには重要である。最近の深層学習に基づく物体認識の技術の進展は目覚ましく、その成果をロボットシステムに取り入れている。自動認識の性能の向上にともない、対話の戦略について、見直しを進めた。自動で認識できる物体が多ければ、それとの位置関係で自動認識できない物体を指示することが効率的になる。位置関係の表現についてはこれまでも注力してきたが、さらに強化を行った。 非言語行動に関してはすべての場合を尽くすというのは困難なので、サービスロボットということを考えて、ロボットに興味を持っていて、何かを頼みたいという場合と、そうでない場合の行動の識別にしぼって、実証実験用ロボットのための認識法を検討した。 以上により、最終年度に実証実験を行う準備がほぼできたということで、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は研究計画では実証実験・評価を行うことになっている。予算の関係で、実際に作業を行う腕を持ったロボットは実現できなかったが、介護施設を動き回り、高齢者とインタラクションのできるロボットは前年度までに開発できたので、それを用いて実験を行う。高齢者の様子を見回り、ロボットに依頼をしたい人を見つけ、そこに行って依頼の内容を理解し、そしてそれを実行するというのが、ロボットの全体の行動である。しかし、実際に実行できる行動は作業を行える腕がないため、かなり限定される。そうすると、最初のうちはロボットに依頼をしても、頼んでもできないと分かると、以後は頼まなくなると考えられる。また、そのようなロボットに対しては、評価が低くなると思われる。したがって、有効な評価が行えるような実験法の検討が問題になる。考えられる方法としては、総合評価は可能な作業を実験参加者にあらかじめ伝えた上での、限定した状況で行い、研究の中心課題であるインタラクションを通じての物体の認識や、行動を観察しての意図の理解は、その部分ごとに、評価ができるような実験を行うということになる。 平成30年度は上に述べたように実験方法について検討を行う。そして、実際の介護施設で実験を行い、研究の評価を行う。最後に、成果を論文等にまとめる。
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