研究課題
エアロゾルの雲への影響(エアロゾルの間接効果)は、気候変動を引き起こす有効放射強制力の最大不確定要因である。この不確定性を克服するためには、エアロゾルという物質科学と、気象学を融合させた新しい統合的研究が必要である。本研究の目的はこのような統合的研究アプローチにより、西太平洋の下層雲を研究対象として、海面水温(SST)と境界層の構造に着目することによりエアロゾルが直接引き起こす雲微物理量の変化(雲のミクロな変化)と、その結果として生じる雲厚や雲量などの雲のマクロな変化を理解し、それらの効果を数値モデルなどにより評価することである。H29年度は、2013年の夏季の西部北太平洋での下層雲の航空機観測を対象とした数値モデル研究を実施した。数値モデルとしては、理化学研究所で開発されたSCALEのラージ・エディー・シミュレーション(LES)モデルをもちいた。エアロゾルと雲・降水との相互作用を調べるために、降水によるエアロゾルの除去過程を微物理モデルに加える改良をおこなった。この改良された数値モデルを使った計算の結果、非降水時に観測されたエアロゾル数濃度や雲の鉛直構造を仮定すると、非降水性の雲が再現される一方、時間とともに雲層が厚くなると降水し始めた。一方、降水時に観測された低いエアロゾル数濃度を仮定すると降水性の雲が再現され、観測されたような雲水量のパッチ状の鉛直構造と似た構造も現れた。さらに感度実験として、亜熱帯東太平洋見られるような強い温度逆転層を仮定すると、下層雲の鉛直発達は抑制された。また長波放射を変えた実験から、SSTで決まる地表面の長波放射も雲底での放射加熱を通じて下層雲に影響することを明らかにした。以上のように本研究では、西太平洋の下層雲を研究対象として、SSTと境界層の構造に着目した数値モデル計算によりエアロゾルと雲との相互作用の重要な側面を明らかにした。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (15件) (うち国際共著 6件、 査読あり 15件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 4件)
Nature Partner Journals: Climate and Atmospheric Science
巻: - ページ: -
10.1038/s41467-018-03997-0
Journal of Geophysical Research: Atmospheres
巻: 123 ページ: 997-1016
10.1002/2017JD028027
Journal of climate
巻: 31 ページ: 297-315
10.1175/JCLI-D-17-0200.1
Journal of Advances in Modeling Earth Systems
巻: 9 ページ: 1921-1947
10.1002/2017MS000936
巻: 9 ページ: 1887-1920
10.1002/2017MS000937
Aerosol and Air Quality Research
巻: 17 ページ: 3091-3105
10.4209/aaqr.2016.12.0573
Atmospheric Chemistry and Physics
巻: 17 ページ: 5851-5864
10.5194/acp-17-5851-2017
Bulletin of the American Meteorological Society
巻: 98 ページ: 1857-1877
10.1175/BAMS-D-15-00317.1
Scientific Reports
巻: 7 ページ: 14855
10.1038/s41598-017-14199-x
巻: 122 ページ: 3544-3572
10.1002/2016JD025843
Nature Communications
巻: 8 ページ: 15329
10.1038/ncomms15329
巻: 30 ページ: 1861-1879
10.1175/JCLI-D-16-0154.1
巻: 30 ページ: 3907-3925
10.1175/JCLI-D-15-0789.1
Geoscientific Model Development
巻: 10 ページ: 3225-3253
10.5194/gmd-10-3225-2017
巻: 122 ページ: 443-468
10.1002/2016JD025441