研究課題
重点研究サイトである岐阜大学・高山サイトにおいて,冷温帯落葉広葉樹林生態系の生態系呼吸に対する土壌呼吸,葉呼吸の寄与の変動を評価するために,大気,土壌空気,土壌水,大気中水蒸気,降水試料の同位体比データを蓄積し,各呼吸のCO2の酸素同位体比推定に関する解析を進めた。また,渦相関法によるフラックス観測から推定される生態系純生産量,生態系呼吸,純一次生産の年々変動とその変動要因を解析した。衛星リモートセンシングによる林冠の生理生態学的構造と光合成能のモニタリング技術開発のために,複数年にわたり取得した個葉分光特性データと放射伝達モデルを利用して分光特性の季節変化の生理生態学的要因を分析した。その結果,従来の知見である色素の変化以外に葉の解剖学的構造の季節変化が分光特性の変化に強く影響していることが示された。本課題の4年間を含む過去8年間にわたる冷温帯落葉広葉樹林の林冠フェノロジーを解析した結果,春から初夏の展葉速度と秋の落葉速度には顕著な年変動が認められた。特に春に比較的高温だった2015年は展葉が早く,これは同所での温暖化実験によって展葉開始時期が早まることと整合的であり,長期観測と温暖化実験によるモデル化の普遍的現象が確認された。同じく高山サイトの冷温帯常緑針葉樹林の温暖化への応答について,生態系モデルを用いて冷温帯落葉広葉樹林の結果と比較した。その結果,常緑針葉樹林では温暖化が総一次生産量(GPP)を増やし,その増加量は特に春先に最も大きく,ついで冬季に大きいことが予測された。タワーフラックス観測や地上カメラ観測による知見から,春先のGPPの増加は主に個葉の光合成能の増加に起因し,冬季のGPPの増加は冠雪日数の減少に伴うものと示唆された。本研究により冷温帯落葉常用樹林と常緑針葉樹林の葉群フェノロジーの相違性が炭素収支の温暖化応答の相違性に顕著に影響することが示された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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