研究課題
同位体組成を指標に用いて対流圏オゾンの起源や挙動を解明するため、対流圏オゾンの三酸素同位体組成定量システムを開発する。従来用いられてきたような沸点差を利用した他成分からの分離と濃縮に依拠した分析ではなく、亜硝酸イオンと選択的に反応させて硝酸イオン化し、その三酸素同位体組成を測定した上で、亜硝酸イオン由来の酸素の影響を補正する、新手法による高感度分析法を開発する。最終年度までに1ヶ月以上の長期に渡る連続分析を実現し、日変化の有無の把握や、成層圏由来のオゾンの混合比の定量などに挑戦する。今年度は、オゾンを亜硝酸イオンと定量的に反応させて硝酸イオン化して捕集する際の捕集条件の検討や、未反応の亜硝酸イオン試薬の除去方法、ブランクの削減方法、国際標準スケールへの校正方法など、分析条件や分析手順を中心に検討を行った。未反応の亜硝酸イオン試薬の除去方法に関しては、未反応の亜硝酸イオンをアジ化水素と反応させて一酸化二窒素に変換して除去する方法が有効であることが明らかになったので、これを中心に検討した。また次年度の基礎実験に使用するため、同位体標準となる高濃度オゾンの生成装置を作成し、またオゾンフリーの大気で満たしたチャンバーを用意して同位体標準オゾンをここに導入して大気レベルに濃度を調整出来るようにした。また本手法を少し改良することで、大気中の亜硝酸ガスや硝酸ガスの三酸素同位体組成や窒素同位体組成を同時に定量出来ることが明らかになったので、この点に関して同時に検討を行った。
2: おおむね順調に進展している
オゾンを亜硝酸イオンと選択的に反応させて硝酸イオン化して同位体測定する本手法を成功させる上で、未反応の亜硝酸イオンを完全に除去する手法を確立することが大きな課題であった。亜硝酸イオンをアジ化物と反応させて一酸化二窒素化することで課題の克服に目処がついたので、順調に推移していると評価出来る。
本年度の前半は前年度に引き続き、捕集効率の改善方法や、未反応の亜硝酸イオン試薬の除去方法、ブランクの削減方法、国際標準スケールへの校正方法など、分析条件や分析手順の検討を中心に行う。前年度の実験の結果、アジ化水素を使って未反応の亜硝酸イオンを除去する方法が有効であることが明らかになったので、これを中心に検討する。また、オゾンフリーの大気で満たしたチャンバーを用意して同位体標準オゾンをここに導入して大気レベルに濃度を調整し、これを各種条件下でフィルターに捕集し分析することで、捕集効率や、吸引時間、未反応の亜硝酸イオン試薬の除去率、ブランク、国際標準スケールへの校正方法などの検討を行う。その上で、年度内に佐渡関岬(新潟県)で試験観測を開始する。得られた試料は名古屋大学の角皆の研究室に輸送し、角皆および院生や研究支援員・補助員が分析を進める。硝酸イオン化したオゾンの濃度や三酸素同位体組成はもちろん、溶解した水の酸素同位体比も定量する。随時同位体組成の分析も進め、分析法などに問題が無いか検証し、問題があれば観測や分析法にフィードバックして改良を加える。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
Biogeosciences
巻: 11 ページ: 5411-5424
10.5194/bg-11-5411-2014
大気環境学会誌
巻: 49 ページ: A63-A72
10.11298/taiki.49.A63