研究課題
我々はマウスを用いたダイオキシン毒性実験において、従来報告の1/8という低用量の胎仔期曝露により高次脳機能に影響があることを明らかにした。さらにダイオキシン受容体(AhR)欠損マウス等の実験、ヒト遺伝子多型解析から、本研究の仮説「AhRは脳発達形成の重要分子であるがゆえに、ダイオキシン毒性が脳に顕われやすい」を設定するに至った。本研究では、この仮説を検証するため、出生コホートにおける子どもの社会性の定量評価とヒトゲノム解析・ヒト臍帯血・唾液中RNA発現網羅解析、マウス行動試験とマウス脳・血液中RNA発現網羅解析を行った。昨年度までのヒト研究で収集したデータを解析し、複数の遺伝子を解析候補として抽出した。これをもとに遺伝子改変マウスや遺伝子変異マウスを選定し、動物実験のための動物作成を行った。来年度より解析を開始できることとなった。また、本研究の中心仮説である「AhRは脳発達形成の重要分子であるがゆえに、ダイオキシン毒性が脳に顕われやすい」について検証を進めるため、Ahr遺伝子のconstitutive active体遺伝子をIUE法により遺伝子導入したところ、海馬神経細胞の発達不全があることを見出した。ダイオキシン曝露マウスの行動表現型について検証するため、遺伝子操作により自閉スペクトラム障害モデルマウスを作成して解析したところ、行動表現型と前頭皮質活動性においてダイオキシン曝露マウスのそれと類似したパターンを示すことを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
モデルマウスの作成も順調であり、またin vivo遺伝子導入によってAhr遺伝子の脳発達における役割について新たな知見を得ることができた。
平成27年度に作成した遺伝子改変マウスの解析を進め、とりまとめを行う。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
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