研究課題/領域番号 |
26241020
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
幸島 司郎 京都大学, 野生動物研究センター, 教授 (60183802)
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研究分担者 |
竹内 望 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30353452)
本郷 裕一 東京工業大学, 生命理工学研究科, 教授 (90392117)
植竹 淳 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(新領域融合研究センター及びライフサイ, 国立極地研究所, 研究員 (40455473)
藤田 耕史 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (80303593)
吉村 義隆 玉川大学, 農学部, 教授 (90384718)
近藤 伸二 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(新領域融合研究センター及びライフサイ, 国立極地研究所, 准教授 (30415161)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 氷河 / 生態系 / アルベド / 微生物 / 環境変動 / 藻類 / バクテリア / 雪氷 |
研究実績の概要 |
今年度はグリーンランド、天山山脈、南極半島、ブータンヒマラヤの氷河で調査をおこなった。グリーンランドでは氷河表面の雪氷藻類群集構造、クリオコナイトホールの空間分布と微生物構成などのデータを取得した。天山山脈では、微生物群集構造のほか、クリオコナイト粒の微細構造の生理活性測定をおこなった。南極半島では、氷河上に赤雪や緑雪といった雪氷藻類ブルームが観察され、雪中の微生物と色素構成、アルベド等のデータを取得した。 ブータンヒマラヤでは、自動気象計のデータ収集とセンサー更新、地中探査レーダによる氷厚測定を実施した。また、ヒマラヤの氷河上堆積物の融解への影響を考慮した氷河質量収支モデルについて学術論文として出版した(原著論文XX番)。 アラスカの氷河生態系の優占動物種であるコオリミミズの腸内細菌群集構造の解明を試みた。16SrRNA遺伝子解析により、群集構成種の多くは氷河由来の好冷性細菌種であることが明らかになり、氷河に適応する過程で、これらの細菌種群を腸内細菌として利用するようになったことが示唆された(原著論文XX番)。 急速に消失しつつある熱帯地域の氷河、スタンレープラトー氷河(ウガンダ)とコネヘラス氷河(コロンビア)で、氷河上と氷河後退域から採取した試料を対象に次世代シーケンサーによるバクテリア16SrRNA遺伝子解析と窒素、炭素安定同位体比測定を行った結果、いずれの氷河でも氷河上の一部の細菌種は氷河後退域でも検出された。しかし多くの細菌種は氷河上に特異的、今であり後の氷河消失がこれらの種の消失を引きおこす可能性があることが明らかとなった。またコロンビアの氷河では、優占種の多くが氷河由来バクテリアとの類似性が高かったものの、ウガンダの氷河からは報告のない種が多く存在し、この氷河のバクテリア叢が他の氷河と比べて極めて特殊であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度予定していた氷河調査を完了することができた。熱帯氷河状の微生物とコケ群集、アラスカのピンクの氷河に生息するコオリミミズ(Mesenchytraeus solifugas)の腸内細菌群集構造、ヒマラヤの氷河上堆積物の融解への影響を考慮した氷河質量収支モデル、などに関する論文を出版することができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまで得られたサンプルの遺伝子解析、同位体分析等と行いながら,各地域の氷河微生物の系統解析、および氷河生態系における炭素・窒素循環に関する研究を進める.また本研究による氷河生物に関する研究結果と先行研究との比較を進め、微生物群集の経年変動と気候要因との関連について解析を進める。コオリミミズ腸内細菌群集の機能を解明するため、メタ転写産物解析を遂行する。ミミズ由来rRNA配列を効果的に除去する手法の最適化を進め、残りの細菌16S rRNA配列と機能遺伝子配列から、実際に腸内で活動している細菌種とその機能の特定を試みる。初年度に開発した氷河質量収支モデルでは、気温減率と降水の高度勾配が大きな不確定要素であるため、今後の現地観測によって明らかにしていく。また本研究と並行して作成した、アジア高山域を網羅する氷河台帳のデータを利用し、より広域における気候変動に対する氷河の応答特性についても解析を進める
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