研究課題
今年度は、これまで得られた試料やデータの解析を進めて成果を取りまとめるとともに、継続調査を行っている中国天山山脈の氷河と、グリーンランドの氷河、および融雪期の月山で調査を行なった。氷河融解に及ぼす氷河微生物の影響を評価する質量収支モデルを開発するために、クリオコナイトホールの発達と衰退、崩壊を表現できる数値計算モデルを構築し、グリーンランド北西部カナック氷帽での観測データで検証をおこなった。クリオコナイトホールについては、これまで発達については解析されてきたが、風速が強まるとクリオコナイトホールが浅くなり崩壊することを明らかにしたのは本研究が初めてである。また、グリーンランド全域を対象に、気象研究所の領域気候モデルの計算結果を境界条件として、クリオコナイトホールが崩壊する時間を計算したところ、アルベドの年々変動と良い一致を示した。このことは、グリーンランド氷床の暗色化のプロセスに、これまで考慮されてこなかった「クリオコナイトホールの崩壊によるクリオコナイト物質の散逸」が影響していることを示唆している。パタゴニアの氷河に生息する氷河昆虫(Andiperla willinki)を対象として16S rRNAに基づく群集構造解析とメタゲノム解析を行った結果、氷河昆虫の腸内細菌群集は氷河表面の細菌群集と大きく異なり、動物の腸内環境に特異的な細菌種が優占していることが判明した。さらにメタゲノム解析によって、複数の氷河昆虫の腸内細菌種由来のドラフト・ゲノム再構築に成功した。各ゲノム上の遺伝子機能を予測したところ、氷河昆虫が摂食した雪氷藻類に含まれる多糖の分解を腸内細菌叢が担うことで、宿主昆虫の栄養や、氷河環境における物質循環に寄与していることが示唆された。最後に、本研究の4年間の成果を、3月に京都で開催された国際雪氷学会主催の「雪氷圏と生物圏の国際シンポジウム」において発表した。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Heredity
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