研究課題/領域番号 |
26241022
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研究機関 | 大阪産業大学 |
研究代表者 |
尾崎 博明 大阪産業大学, 工学部, 教授 (40135520)
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研究分担者 |
藤川 陽子 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (90178145)
津野 洋 大阪産業大学, 人間環境学部, 教授 (40026315)
山田 修 大阪産業大学, 工学部, 教授 (10140203)
李 玉友 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30201106)
藤長 愛一郎 大阪産業大学, 工学部, 准教授 (40455150)
櫻井 伸治 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (30531032)
谷口 省吾 大阪産業大学, 工学部, その他 (40425054)
高浪 龍平 大阪産業大学, 工学部, その他 (00440933)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | セシウム除去 / 指定廃棄物 / 下水汚泥 / フェロシアン化物 / 共沈除去 / 放射性物質 / セシウム抽出 / ボルタンメトリー法 |
研究実績の概要 |
下水汚泥焼却灰等からのセシウム等の抽出やフェロシアン化物生成によるセシウムの共沈除去に関し、安定セシウム(Cs133)添加系(放射性物質無含有)での試験、及び下水処理場における実処理試験(放射性物質含有)を行った。結果の概要は以下のとおりである。 1.放射性物質を含まない下水汚泥焼却灰に関する実験 下水汚泥焼却灰2種について固液比1 対2.5 での1M 熱シュウ酸抽出および純水抽出を実施したところ、シュウ酸抽出による方がより多くの金属(Al、Fe、Mn、Cu、Zn等)が溶出し、フェロシアン化物生成に有利であることがわかった。このろ液に非放射性セシウムを最終的に100μg/L となるように添加し,pH を3から10に調整したうえで,フェロシアン化カリウムを所定の濃度(0.1mM から最大1mM)になるように添加したところ、溶液中にもともと含まれる下水汚泥由来の遷移金属とフェロシアン化物イオンの反応による沈殿が形成されることを確認した。セシウム除去率はいずれも92%以上(多くは96%以上)となったが、pH 5以上では水酸化物等の沈殿量が増加し、pH 3-4での共沈が適切と考えられた。 2.放射性物質を含む下水汚泥焼却灰の処理 放射性物質を含む下水汚泥焼却灰(飛灰)を対象に、上記項目1の結果を基礎として、純水及びシュウ酸による抽出を行い、抽出液にフェロシアン化カリウム(0.1~0.3mM)を添加してセシウムの共沈除去を行った。ボルタンメトリー法による金属分析によると、純水による抽出では鉄濃度が、またシュウ酸による抽出では亜鉛濃度が高かったため、フェロシアン化亜鉛よりはフェロシアン化鉄を形成させるためpH 3で共沈を行うか、あるいは、別容器にフェロシアン化銅またはフェロシアン化ニッケルを形成させて投入する方法を取った。この結果、放射性セシウムについて95%超の除去率を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放射性物質で汚染された指定廃棄物(下水汚泥焼却飛灰)抽出液からのセシウム除去にフェロシアン化物共沈法を適用する研究を行った。放射性物質を含む実試料を取り扱う前に、放射性物質を含まない下水焼却灰試料に蒸留水や酸(シュウ酸等)を加えることによる飛灰中金属類の抽出や、抽出液に安定セシウム(Cs133)を添加する系でのフェロシアン化物生成によるセシウムの共沈除去に関する基礎的検討を行った。この結果、抽出時の金属種の挙動が明らかになるとともに、セシウム除去率はいずれも92%以上(多くは96%以上)が得られ、実施計画は十分に達成された。 放射性物質を含む実下水汚泥焼却灰の処理については緊急性を要するため、計画した現場試験については一部平成27年度に予定していた内容についても前倒しで行った。結果として、実試料に対し、pH やフェロシアン化物濃度、必要に応じて添加する金属種を最適化することで95%以上の放射性セシウムを除去することが可能であることがわかり、実施計画に対する達成度では期待以上の成果が得られた。 また、抽出液中に残留するシュウ酸及び未反応のフェロシアンの分解について放射性物質を含まない系でオゾン処理法を適用し、同法が有効であることを確認したが、安全上の観点から放射性物質を含む系での検討には至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
下水汚泥焼却灰からのセシウムの抽出にはシュウ酸の利用が効率的であり、セシウムと鉄やニッケルの金属が共存する系にフェロシアン化カリウムを添加して、低 pH(例えばpH 3)でフェロシアン化物(フェロシアン可鉄やフェロシアン化ニッケル)として共沈させる方法が有効であることが、室内実験及び放射性物質を含む下水汚泥焼却灰を用いる現場試験により明らかになってきた。セシウムを高率で除去するためには、抽出液中の重金属の組成(本研究では現場で判定できる分析法であるボルタンメトリー法を開発、利用)やセシウムの化学形態(イオンであるか否か)、下水汚泥焼却灰に安定化処理がなされているかどうかなどの諸因子があり、室内実験と現場試験とにより、さらに最適なフェロシアン化物生成条件を求めていく。また、良好なセシウム除去が行われたとしてもフェロシアン化物に取り込まれたのか、あるいは単に付着していることによるのかは、沈殿の取扱上重要であり、少なくとも室内実験(非放射性セシウム利用あるいは管理区域内でのCs137による実験)によりフェロシアン化物生成におけるセシウム除去機構を明らかにしていく。また抽出液中に残留するシュウ酸及び未反応のフェロシアンの分解については放射性物質を含まない系でオゾン法について検討し、有効であることがわかったが、分解法には紫外線分解法等の他の方法もあり、適切な方法についてさらに検討していく。最終的には高濃度の放射性物質を含むフェロシアン化物(沈殿)の処理・処分が必要であり、当研究では燃焼合成によるセラミックス体による封じ込めについて検討していく。
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