研究課題/領域番号 |
26241023
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
保高 徹生 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地圏資源環境研究部門, 主任研究員 (60610417)
|
研究分担者 |
中村 公人 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30293921)
村上 道夫 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (50509932)
塚田 祥文 福島大学, 学内共同利用施設等, 教授 (50715498)
大西 健夫 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (70391638)
吉川 夏樹 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (90447615)
宮津 進 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門 地域資源工学研究領域, 研究員 (30757844)
辻 英樹 国立研究開発法人国立環境研究所, 福島支部 環境影響評価研究室, 研究員 (50719599)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 放射性セシウム / 水 / ため池 / 水田 / リスク評価・管理 / 流出係数 / 都市堆積物 |
研究実績の概要 |
[研究1:広域モニタリング:番号は昨年度提出の計画と対応]本年度は、阿武隈川支流河川および2地区の河川水(7ヶ所)、ため池(10ヶ所)、地下水(1ヶ所)、渓流中(2ヶ所)の溶存態・懸濁態放射性セシウム濃度(以下、rCs)を4月、5月、7月、8月、10月、11月、12月、3月に測定した。 [研究2:水田からのrCs流出解析]H26年度に引き続き、3地区の水田を対象としてrCsの流入・流出・水田内変化を測定し、水田への放射性セシウムの蓄積・流出状況を評価するとともに、簡易モデルを構築して日本における一般水田の流出量の範囲を推定した。 [研究3:モニタリングシステム開発]銅置換体プルシアンブルー担持不織布を用いて、海水・汽水中の溶存態rCsの迅速濃縮方法を開発した。室内試験および現地適用性試験の結果、従来のAMP法では1週間程度かかっていた20Lの海水の前処理が40分程度で実施できることを確認した。またリターからの浸出水中の放射性Csをモニタリングする装置の開発にも着手した。 [研究5:除染等のリスク管理戦略の策定]避難区域内地区における帰還後のリスク管理戦略を構築するため、福島県阿武隈高地内の避難区域内の地元住民と協力してDシャトルを用いた線量調査を実施するとともに、帰還後の生活/生産活動におけるリスクについて定期的な対話を持った。また、減容化技術等も含めた減容化のあり方について基礎的なモデルを構築し、解析実施体制を整えた。 [その他研究][ため池内における溶存態rCsの経時変化と変化要因評価]に関する研究、[都市堆積物中のrCsの存在形態]と[都市堆積物の流出解析]に関する研究、[水を経由した長期環境動態シミュレーション]に関する研究について推進した。また[研究4:除染の影響評価]は現在までの進捗に示す理由によりH27年9月までのデータで取りまとめる予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H27年当初に記載した計画に対する進捗を以下に示す。[計画1]の広域モニタリングは、他の研究チームの検討状況も踏まえ、調査地点・データの重複を避けるため、当初の予定よりも調査範囲を絞って研究上重要な領域に集中して調査を推進し、概ね予定通りに進行している。一方、[計画3]の除染に伴う影響評価については、H27年9月の豪雨により一部モニタリング機材が浸水し、自動採水器、濁度計、水位計等が故障のため使用不可となった。そのため、除染の影響評価のモニタリングはH27年9月で一旦終了した。モニタリング機材の新規購入は難しく、H27年9月までのデータで除染に伴う影響を整理することとした。 [計画2]の水田からの流出量の詳細評価と解析は、代かき・中干し時のrCsの流出特性について、国際誌査読付き論文が掲載され、また、通年のrCsの流出・流入状況の計測も予定通り実施できており、概ね予定通り進行している。 [計画3]のモニタリングシステム開発は、当初の予定通り海水中の放射性Cs迅速モニタリング装置のプロトタイプの開発を終えた。国際誌査読付き論文が1報掲載され、プレスリリースも実施した。また、複数の機関において本モニタリングシステムの活用が開始されており、予定通りである。 [計画5]の除染等のリスク・コスト評価は、減容化技術等も含めた減容化のあり方について基礎的なモデルを構築し、解析実施体制を整えたことから、概ね当初の予定通りの成果を上げている。また、避難区域内におけるDシャトルを用いた外部被ばく線量の測定、住民対話に基づくリスク管理戦略の立案も進んでおり、概ね順調と判断した。 [その他]年度当初の予定にない事項として[1]の結果として、ため池で溶存態rCsについて興味深い挙動が示されたことから集中的に[ため池内における溶存態rCsの経時変化と変化要因評価]について研究を推進した。
|
今後の研究の推進方策 |
[1]広域モニタリング、[2]環境回復活動を考慮した土地利用別モニタリング:阿武隈川流域及びその一部支流において継続的なrCsのモニタリングを実施する、また、水田からの流出に関する最終的な取りまとめ、都市堆積物のrCsの存在形態評価と河川への流出特性評価、ため池内の放射性Csの動態評価を実施する。また除染等による環境回復活動が水質等に与える影響について、取得データから解析を実施する。 [3]土地利用別/地域別の放射性Csの流出特性評価:[2]の成果を元に、土地利用別の流出係数について評価を実施する。 [4]長期動態評価については、広域モデルによる阿武隈川水系もしくはその支流を対象とした解析を実施するとともに、複数のモデルの結果を比較する。 [5]除染・帰還に際したリスク管理戦略の構築:除染後に残存する放射性Csに対して、被ばく量低減や生活圏流入防止の観点から、複数のリスク管理オプションを検討し費用対リスク削減効果を評価する。また、減容化戦略に関する検討、住民対話に基づく現実的なリスク管理戦略についても検討する。 [6]モニタリング技術開発と国際連携:銅置換体PBを用いた海水・淡水のモニタリング技術の高度化、およびリターからの浸出水中の放射性Csのモニタリング装置の開発のための研究を実施するとともに、国内機関およびIAEA等の国際機関とモニタリング技術等の連携や標準化を進める。
|