研究課題/領域番号 |
26242003
|
研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
星加 民雄 崇城大学, 工学部, 准教授 (10331068)
|
研究分担者 |
佐藤 優 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (20093958)
北岡 明佳 立命館大学, 文学部, 教授 (70234234)
藤本 英子 京都市立芸術大学, 美術学部, 教授 (60336724)
清田 勝 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40153241)
古賀 元也 崇城大学, 工学部, 助教 (30635628)
和泉 信生 崇城大学, 情報学部, 助教 (60553584)
村上 泰浩 崇城大学, 工学部, 教授 (10133563)
八田 泰三 崇城大学, 工学部, 教授 (40208533)
松尾 幸二郎 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50634226)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 錯視効果 / イメージハンプ / 速度抑制 / 交通システム / ラウンドアバウト / ジグザグ型ストライプパターン / 心理的要因 / 凹凸効果 |
研究実績の概要 |
本研究は「錯視効果の交通システムへの活用」をテーマとして10人のメンバーによる研究組織でスタートした。11月23日には、本研究に関わる分担研究者全員を招集し協議会を開催した。研究代表者である星加は、複数の斜線が交差するジグザグパターンの凹凸効果を活かした新規デザインを含む3種類の原寸大実験モデルを公開し、研究チーム全体で施工した実験道路において走行検証実験を行った。それぞれの研究分担者による走行実験の検証、様々な角度からの検討を重ね、施工が容易で安価なライン表示によるイメージハンプに絞り、その詳細内容の特許申請を行い、2月末に受理された。 デザインの主要素となるジグザグ集合パターンは、傾斜角が異なる線の集合体となることで面と同様な視覚的効果を演出し凹凸面が形成される。また視覚的効果に加え、センターライン等に使われる溶融型ラインを錯視ラインの一部に表示にすることで軽微な衝撃と音が加わり速度抑制効果が高められる。一方で、ジグザグ形状の見え方は走行速度によって異なるため、錯視ラインの幅や間隔、形状、本数に加え、設置場所(歩道手前、ラウンドアバウト手前の交差点、速度超過が予測される直線道路や曲線道路等)に応じたデザイン活用内容も盛り込まれている。 それぞれの各研究分担者の成果として、本研究内容の学会等での論文発表等は本年度は出されていないが、それぞれの研究担当から以下の内容で報告を受けている。村上氏からは、メロディーロード等の騒音調査の結果報告書、古賀氏と和泉氏からは、実験道路での実走映像とVRを活用したシミュレーション映像との比較検証結果報告、松尾氏からは、ラウンドアバウトの調査研究報告、佐藤氏および藤本氏からは、自転車道に設置する速度抑制デバイス開発に向けた九州大学伊都キャンパスにおける社会実験の報告等を受け取っており、来年度発表に向けた準備は着々と進められている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は錯視効果の交通システムへの活用をテーマとした10人の研究組織によるプロジェクト研究としてスタートした。11月23日に開催した研究組織での協議会では、研究代表者である星加による複数の斜線が交差するジグザグパターンの凹凸効果を活かした新規デザイン(原寸大実験モデル)を初公開し、施工した崇城大学内の実験道路において研究チーム全体で走行検証実験を行った。走行実験を通し様々な角度から検討を重ね、その成果内容を特許申請し、2月末に受理された。現在も最終審査に向けた様々な角度からの検証を行っている。 当初具体的なの研究計画では、走行車線に対し直交するストライプパターンによる盛り上がり効果に重点を置いたストライプ型イメージハンプだけに絞っており、模型およびシミュレーション画像による検証から仮施工での走行実験検証までを予定していた。1/2縮小モデルによる錯視効果の確認作業で速度抑制効果の期待度が低かったためアイディアの方向転換をしたことが幸いした。リデザインの思考過程で、複数の斜線が交差するストライプパターンの図柄が斜めから見た時に凹凸効果が得られることを発見したことにより3つの施工事例による検証実験が可能となった。 特許申請後の熊本県警および熊本市職員の見学会では大きな反響を得ることもでき社会実験までの流れが見えてきた。一方、ラウンドアバウトの法改正に伴い円形交差点手前の速度抑制デバイスの開発が求められる状況でもある。本研究チームのメンバーである松尾氏はラウンドアバウト推進委員会のメンバーでもあり豊橋地区設置プロジェクトにも関わっている。本年度の研究成果が順調に進めることができた結果、ラウンドアバウト交通システムと結びつけた研究へと展開が広がる可能性が大きくなったといえる。また自転車道の速度抑制に向けた取り組みも予想以上に進展しているなど、全体的にも順調な研究達成度といえる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は錯視効果の交通システムへの導入を目指した異分野融合型研究組織による取り組みである。次年度の計画では、特にラウンドアバウト交通システムに向けた取り組みに主眼を置き研究組織の一部追加等の変更を行い遂行していく予定である。具体的にはイメージハンプと円形内の誘導表示システムならびに円形内に設置するランドマーク的役割を担うシンボルサインの照準を合わせた交通システムの構築を目指す。 日本においてラウンドアバウトは交通法規等の影響で米国や西欧諸国に比べ普及していない。その理由が左折優先の交通法規である。昨年春に交通法規変更に伴い円形内の走行車両が優先権を持つことになった。信号機の交差点に慣れている日本人にとって信号機のないラウンドアバウト交通システムは戸惑いの多い環境となるであろう。そのためラウンドアバウト手前の速度抑制デバイスの開発は必要不可欠となる。特許出願が受理されたジグザグパターンイメージハンプの需要の可能性は非常に高い。本年度の研究成果である歩道手前や速度超過が予測される直線道路、曲線道路等に設置することを目的としたイメージハンプの新提案は今後の土台となる成果である。次年度は、ラウンドアバウト開発に関与している松尾氏との連携およびシミュレーション担当の古賀、和泉氏、心理的側面からのアプローチに加え、新たにモーションキャプチャーによる画像検証の専門家も加えて研究遂行していく計画である。調査研究においては日本国以内のラウンドアバウトだけでなく、優れたシステムを持つ北欧の調査研究も行い、具体的な提案ができる段階まで研究遂行していく予定である。なお、本年度から次年度にまたがって研究を遂行している九州大学の佐藤氏と京都芸大の藤本氏による自転車道における減速効果のある路面マーキングの研究開発も形が見えてきており、ラウンドアバウトを含む交通システム構築につながる成果としていきたい。
|