研究課題/領域番号 |
26242003
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
星加 民雄 崇城大学, 総合教育センター, 准教授 (10331068)
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研究分担者 |
佐藤 優 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (20093958)
北岡 明佳 立命館大学, 文学部, 教授 (70234234)
藤本 英子 京都市立芸術大学, 美術学部, 教授 (60336724)
村上 泰浩 崇城大学, 工学部, 教授 (10133563)
八田 泰三 崇城大学, 工学部, 教授 (40208533)
松尾 幸二郎 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50634226)
古賀 元也 崇城大学, 工学部, 助教 (30635628)
和泉 信生 崇城大学, 情報学部, 助教 (60553584)
坂本 英俊 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (10153917)
甲野 善一郎 崇城大学, 芸術学部, 助教 (40449955)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ラウンドアバウト / 錯視効果 / 視点移動 / 誘導サイン / シンボルサイン / ランドマーク / 速度抑制効果 |
研究実績の概要 |
信号機のない交差点であるラウンドアバウトはヨーロッパやアメリカでは多く設置されているが日本では馴染みのない交差点である。一昨年秋の法律改正に伴い円形内の車両走行が優先となり、今後、全国各地にこのシステムが広がる可能性が高くなった。平成27年8月に開催した科研メンバー全員参加による成果報告会を兼ねたシンポジウム後、平成27年度の研究計画協議でラウンドアバウト交通システム構築に特化した方向で研究遂行していく方針を定めた。研究代表者である私は9月初旬にラウンドアバウト先進国であるフィンランドに出向き複数のラウンドアバウトを調査し実測調査を念入りに行った。ラウンドアバウトは都市部より交通量が比較的少ない地方に点在している。平成28年3月に開催が決定しているエミールセーデル美術館(成果報告会会場)の周りに集中して点在することがわかり現地協力を得ることができたことも幸いした。帰国後図面作成を行いアイディア展開を進めていった。平成27年2月に仮申請したジグザグ形式イメージハンプをラウンドアバウト交通システムに組み入れた新たな内容で特許申請の内容を精査し平成27年11月に提出した。この間の研究成果発表は控えた。 ラウンドアバウト円形内の造形形体は景観デザインの視点が重要なファクターとなるため、アイディアのベースとなる芸術表現としての実験制作にも主眼を置き、研究成果の発表の場として3月開催が決定している錯視芸術の展覧会開催の準備にも重きを置いた。特許申請受理後、芸術工学会秋季大会で発表を行った。エミールセーデル美術館での展覧会では、錯視効果をベースにした作品の展示に加え、応用展開として研究遂行してきたラウンドアバウト交通システムへの提案を展示会場の中で発信した。平成28年度5月開催予定の芸術工学会国際シンポジウムも同会場で行う予定であり、各分担研究者の協力体制のもとで順調に研究が進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
〇平成26年度:速度抑制効果を目的としたイメージハンプの開発研究として3パターンのアイディアを学内の実験道路に施工し研究チーム全メンバーによる走行実験を行い2月に特許申請を行った。その後、熊本県警、熊本市道路局の専門スタッフ立会いで走行実験検証を行い協議した。 〇平成27年度:8月に開催した科研メンバー全員参加による成果報告会を兼ねたシンポジウム後、平成27年度の研究計画協議に入り、ラウンドアバウト交通システム構築に向けた研究方針を決定した。 研究代表者である私は9月初旬にラウンドアバウト先進国であるフィンランドに出向き複数のラウンドアバウトを調査し実測調査を行った。特にラウンドアバウト交通システム計画で重要になってくるのが、交差点進入手前の速度抑制方法である。そのため前年度に開発したイメージハンプを交差点手前に設置することを想定したリデザインを行った。さらに円形内に設置する立体造形物の設置計画として、従来の彫刻作品の設置ではなく誘導サインとしての役割を担う造形物のあり方を思案し総合的なデザインシステム案を打ち出した。その後、これらの提案内容を含めた特許申請内容に範囲を広げ最終提出を11月に行った。具体的には凹凸錯視効果と容易な施工プロセス、イボ付きラインを用いた音と衝撃による速度抑制デバイスとしてのシンプルで錯視効果の非常に高いデザインとし、ラウンドアバウト交通システムへの活用を視野に入れた内容とした。特許申請受理後、九州大学で開催された芸術工学会で研究発表を行った。フィンランドのエミールセーデル美術館での展覧会(3月~)では、錯視効果をベースにした作品の展示に加え、錯視の応用展開として研究遂行してきたラウンドアバウト交通システムへの提案を展示会場の中で発信した。平成28年度の5月開催予定の芸術工学会国際シンポジウムも同会場で行う予定であり、各分担研究者も発表予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1)ラウンドアバウト進入時の錯視効果による速度抑制方法の提案と実施に向けた計画:ラウンドアバウトは信号機のない交差点であるため自主的が速度抑制方法が必要である。特許出願中のイメージハンプは、ジグザグパターンによって凹凸効果を演出する表示パターンである。車輪が走行する位置には∨字パターンが設けてあり視覚的にへこんで見える錯視効果を活用している。また音の鳴るイボ付きラインを設けることで錯視効果に加え、音と衝撃で速度抑制効果を図る。平成28年度は施工実験まで行う予定である。 2)ラウンドアバウト円形スペース内のシンボルサインのデザインシステム:これまでの設置事例の多くは、地域のシンボルとしての象徴的な立体彫刻作品が多い。しかし、ラウンドアバウト円形スペースは交差点であるため誘導サインとしての役割を担う必要がある。そのため各入り口からの形や色による印象付けが重要である。地域の景観美に大きく影響するラウンドアバウトの設置において、芸術、景観デザインの視点に立った学際領域による研究開発が必要である。本研究では多視点による異なる印象を重複した多義立体的な立体視覚表現(視点限定造形)が適していると考え、シンプルな形から色による組み合わせ、傾斜、拡大、縮小、配置方法をユニット増殖展開方法でシステム的に展開する。 3)ラウンドアバウト進入時における車両の進行方向を誘導するポール型の誘導サイン:車両の進行方向等を誘導するサインには視点移動造形の考え方が有効である。棒状、四角形、三角形の断面形状の連続パターンの配置、LEDの活用、視点の移動で矢印を表示するアイディアを盛り込み表現要素の抽出と展開方法を探る。 4)騒音調査、景観デザインの視点、心理学的視点、施工現場からのアプローチ、表現方法、素材、視覚的効果からの視点等のそれぞれの分担研究者による研究成果を統合しラウンドアバウト交通システムの構築を図る。
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