研究課題/領域番号 |
26242016
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
南 武志 近畿大学, 理工学部, 教授 (00295784)
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研究分担者 |
武内 章記 独立行政法人国立環境研究所, その他部局等, 研究員 (10469744)
高橋 和也 独立行政法人理化学研究所, その他部局等, 研究員 (70221356)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 墳墓出土朱 / 産地推定 / 硫黄同位体分析 / 水銀同位体分析 / 鉛同位体分析 |
研究実績の概要 |
科学研究費で購入した水銀測定装置を用いて、朱より水銀を含まない硫黄同位体分析用サンプル調整方法を検討した。朱(硫化水銀)を逆王水に溶解し、臭素を添加して硫黄イオンを硫酸イオンに変えた。その後、陽イオン交換樹脂で水銀イオンの除去を考えたが、吸着しないで硫酸イオンと同時に水銀も検出された。陰イオン交換樹脂を使用すると水銀がほとんど溶液中に検出されなかったことから、水銀は臭素イオンと錯イオンを形成して陰イオンとなっていると考えた。そこで、陽イオン交換樹脂の使用をあきらめ、逆王水で溶解したのち、臭素を添加し、その後超純水で希釈してから塩化バリウム溶液を加え、硫酸バリウムの結晶沈殿を作成し、超純水で洗浄し、その中に水銀が混在しているかを調べたところ、混在が確認されなかった。このことから、硫黄同位体分析用サンプル調整は上記の方法を用いることとした。 次に、科学研究費で購入した硫黄同位体分析装置をセットアップし、同位体分別が生じるかを検討した。その結果、出発物質としての朱は10mg以上だと硫酸バリウム結晶で同位体分別が生じないことが判明した。さらにその後、10mg以下でもピーク強度アンペアが10mg以上のときと異なって高くなることから、10mg以下の検量線を別に作成することで安定した同位体比が得られることを確認し、同位体分別効果ではないと断定した。 鉛同位体分析と水銀同位体分析は、従来の分析方法により分析数を増やした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
硫黄同位体微量分析方法が確立できた。また、硫黄同位体分析用のサンプルに水銀の混在がないことが確認でき、今後の分析に弾みがついた。水銀同位体分析と鉛同位体分析はいままでの方法で行い、データの積み重ねを行っている。 予想外であったのは、科学研究費で購入を希望していた硫黄同位体分析用の前処理装置を理化学研究所に納入するのに時間がかかったことである。実際に設置して稼働できたのが、27年1月になってからであり、硫黄同位体分析が非常に遅れる事態となった。理由は、理化学研究所の事務手続きの遅滞にあった。それでも、それまでに硫黄同位体測定用のサンプル調整方法が確立できていたことで、設置後順調に稼働できている。
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今後の研究の推進方策 |
墳墓出土朱は発掘した各地方自治体の教育委員会や埋蔵文化財センターが保有している場合がほとんどであり、できるだけたくさんの墳墓出土朱を収集することが第一と考えている。ただし、やみくもに収集するのではなく、時代ごとの収集と、地域ごとの収集を考えており、27年度は兵庫県と大阪および奈良の墳墓に重点を絞りたい。次に、いままでに収集した朱を用いて硫黄同位体分析、水銀同位体分析および鉛同位体分析を行い、データの蓄積を行う。
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