研究課題/領域番号 |
26242017
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研究機関 | 国立研究開発法人 森林総合研究所 |
研究代表者 |
田端 雅進 国立研究開発法人 森林総合研究所, 東北支所, 産学官連携推進調整監 (40353768)
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研究分担者 |
宮腰 哲雄 明治大学, 理工学部, 教授 (00062018)
渡辺 敦史 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (10360471)
船田 良 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20192734)
小谷 二郎 石川県農林総合研究センター(林業試験場), 森林環境部, 主任研究員 (40450811)
升屋 勇人 国立研究開発法人 森林総合研究所, 東北支所, チーム長 (70391183)
安部 久 国立研究開発法人 森林総合研究所, 木材特性研究領域, 主任研究員 (80343812)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 漆 / 樹脂生産量 / 樹脂道数 / 合計断面積 / シグナル物質 / 傷害樹脂道 |
研究実績の概要 |
異なるクローンのウルシを用いて樹脂生産量の異なるウルシの樹皮構造を観察した結果、樹脂生産量の異なるクローンにおいて、内樹皮の厚さや単位接線幅あたりの樹脂道数及び合計断面積に有意な差が認められたことから、樹脂生産量と樹皮の組織学的特徴に関係があることが明らかになった。樹脂道内に樹脂生成状況を明らかにするため、クライオセムで異なるクローンのウルシ樹皮構造を観察した。その結果、形成層からの位置に関わらず樹脂道内に樹脂が存在していることが明らかになった。樹脂生産量が異なるクローンの形成層部位で発現する遺伝子を単離した結果、その遺伝子を単離し、遺伝情報を収集した。生成漆の特性を樹脂生産量が異なるクローン間で比較した結果、クローン別の初辺・盛辺・末辺漆におけるウルシオール量、ラッカーゼ活性及び乾燥性はほとんど差がないことが明らかになった。漆生成には内樹皮に形成される傷害樹脂道が関係することから、シグナル物質、傷及び菌類に対する樹皮の反応性を調べた結果、シグナル物質のジャスモン酸が一部のクローン成木で傷害樹脂道を誘導すること、傷や菌類(Phomopsis属菌)に対して傷害樹脂道を形成することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当年度は達成目標とした樹脂生産量の違いと樹皮の組織学的特徴との関係性を検討した。その結果、樹脂生産量が異なるクローンにおいて内樹皮の厚さや単位接線幅あたりの樹脂道数及び合計断面積に有意な差が認められ、樹脂生産量と樹皮の組織学的特徴に関係があることを明らかにした。樹脂道内の樹脂生成状況を明らかにするため、クライオセムで異なるクローンのウルシ樹皮構造を観察した結果、形成層からの位置に関わらず樹脂道内に樹脂が存在していることを明らかにした。次に、異なるクローンでシグナル物質などに対する樹皮の反応性を検討した。その結果、シグナル物質のジャスモン酸が一部のクローン成木で傷害樹脂道を誘導することなどを明らかにした。以上の結果により、おおむね順調に進展していると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は樹脂道形成の誘導を確認するため、シグナル物質のサリチル酸ナトリウムやエスレルを処理し、樹脂道の形成を観察する。また、刺激応答にかかわる遺伝子を明らかにし、これらの遺伝子に対するウルシオール量やラッカーゼ活性の関係を検討する。さらに、重要文化財建造物や国宝などに利用する上で重要な生成漆の硬化性や透明度などの特性を産地の異なるクローンで評価する。
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