研究課題/領域番号 |
26242020
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
松井 章 独立行政法人国立文化財機構 奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 客員研究員 (20157225)
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研究分担者 |
石黒 直隆 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (00109521)
中村 俊夫 名古屋大学, 年代測定総合研究センター, 教授 (10135387)
米田 穣 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (30280712)
山田 仁史 東北大学, 文学研究科, 准教授 (90422071)
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研究期間 (年度) |
2014 – 2015
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キーワード | 家畜 / 考古科学 / 動物考古学 / 古環境 / 古代DNA / 安定同位体 / 民族考古学 / 三次元計測 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年10月に浙江省文物考古研究所にて開催した、共同研究の成果報告会の内容をもとに、日本語と中国語併記による成果報告書を刊行した。内容は、おおよそ以下の4点にまとめられる。①河姆渡文化期の田螺山遺跡出土動物遺存体の分析では、哺乳類のほか、これまで整理が進んでいなかった魚類、鳥類と爬虫類について初歩的な分析検討をおこなった。魚類は、カムルチー科、コイ科、ナマズ目などの淡水魚が中心であり、汽水域にも進入するスズキ属やボラ科などが含まれ、構成魚種は河姆渡遺跡と類似する。鳥類では、主に陸水域や湿地に生息する種で構成され、その大半がカモ科とクイナ科であった。爬虫類では、大量に出土していたカメ類の同定から、クサガメが確認された。良渚文化期の良渚遺跡群美人地遺跡では、イノシシ/ブタを分析するなかで、新石器時代の飼養環境はいまだ野生状態に近い環境にあり、現代でもイノシシとブタは容易に交配して雑種が生まれることから、野生であるイノシシと家畜ブタの混血が日常的に進んでいたと推察するに至った。②田螺山遺跡の各層より出土した木柱列の放射性炭素年代測定をおこない、遺跡形成年代の検証をすすめた。③美人地遺跡出土の古人骨の初歩的分析では、人為的損傷と思われる痕跡なども確認され、当時を考える貴重な事例を提示した。④炭素・窒素同位体分析による食性分析では、長江下流域における新石器時代の変遷を検討した結果、同位体生態学的状況が極めて複雑であることが明らかとなった。そのため、今後、大陸独自の同位体生態学マップを作成する必要性が提唱された。このほか報告書には、三次元計測を利用した人骨骨格図譜(改訂版)を公開するとともに、奈良文化財研究所のデータベース上では、ウシ、ウマ、イノシシ、ニホンジカ、イヌ、ヒトの三次元計測による、3D骨格図譜「3D Bone Atlas Database」を公開した。
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