研究課題
平成28年度は年度計画に従い、4つの研究グループ連携で下記の課題を発展的に継続した。また、関連する成果について国際永久凍土学会(ポツダム、ドイツで開催)等国内外で発表や論文公表に行い、引き続き順調に進捗した。1. 植生-土壌パラメータデータの収集・整備(植生-凍土G 、広域モデルG連携):研究対象地域での地形区分や植生区分、土壌の熱伝導率等の物理パラメータ等が整理され、それらに基づく永久凍土分布や温度変化、地形変化の解析を実施した。2. 現地観測による熱・水・炭素解析(植生-凍土G 、水文-凍土G、空間分布G連携):7~10月にモンゴル、ロシアのヤクーツク・エレギーにおいて、植生調査ならびに活動層分布と永久凍土融解地形の測量などの現地調査を行った。自動観測データを収集し、ヤクーツク・エレギーでは植生構造の変遷による水・熱・炭素収支と凍土(活動層)変動との関係の解析を進めた。また、東シベリアとモンゴルに展開されている凍土地温・土壌水分分布観測網の観測データの収集を順調に行い、各地域での凍土温度変動の解析も進めた。3. 衛星データの収集・解析手法の検討(空間分布G、水文-凍土G連携):2016年度に撮影されたALOS2-PALSARデータと、COSMO-SkyMedのXバンドSARデータを入手し、レナ川中流地域における植生変化、水域変化、地形変化の抽出と地図化を進めた。また、凍土融解によるサーモカルスト(地形沈降)湖の統計的特徴について、9月の現地調査でUAVを用いた写真測量にもとづく地形解析を進めた。4. 陸面モデルの改良(広域モデルG担当・全グループ連携):陸面モデル(CHANGE)の吹雪による雪の除去過程や、地表の植生(コケ層)と有機物層の熱・水輸送過程を改良し、その数値実験から地温と活動層厚の再現性の向上が図られた。また、凍土層内の氷の存在を陽に含む改良を開始した。
2: おおむね順調に進展している
本年度も、5~10月でロシア・モンゴルでの共同の現地調査を活発に行い、研究全体の連携を強めて研究を進めることができた。モンゴル全土とロシア・東シベリアの集中観測点、分布観測網の観測データも順調に取得でき、植生-凍土、水文-凍土、凍土広域分布の解析がさらに進展した。ヤクーツク地域では、植生・地形・凍土調査を実施し、活動層厚の変化が地形変化(サーモカルスト)と対応していることが明らかとなった。空間分布解析では、ALOS2とCOSMO-Skymedの衛星データが新しく得られ、ALOS、LANDSATとあわせてロシア・レナ川中流域とモンゴル中北部域でのデータ解析によって、気候変化による凍土・水域・植生・地形変化の抽出とその地図化が進められた。また、UAVを用いた近接リモートセンシングによるサーモカルスト変化の観測と長期データ解析から、1990年以降の凍土融解現象の地域的特長についての解析を進め、土地利用に応じた凍土荒廃過程の違いを検出することが出来た。以上の成果は、2016年6月の国際永久凍土学会、11月のヤクーツクでの国際シンポジウムで集中的に各種発表を行ったほか、国内外の学会での招待講演・発表、ならびに国際誌での論文成果(14本の査読付論文)として順調に公表された。また、各国の研究者との意見交換や、3月の全体会合で解析結果の議論を深めることで、本研究課題に関する研究進捗と成果を応用した今後の研究計画についても共通理解が進んだ。
これまでの現地観測、衛星データ、陸面モデルによる解析結果を踏まえ、今後は以下の研究をさらに発展させ、科研の研究成果をまとめる予定である。また、成果公表として、アジア永久凍土会議での発表・論文投稿を進めるとともに、研究成果の地理情報データの作成も進めていく。1. 植生-凍土G:ヤクーツクとエレギーで森林蒸散流の同時比較観測を継続し、活動層厚・土壌水分変化との対応を明らかにする。2017年度までの長期観測データの解析結果から、植生と凍土環境の変遷の影響評価を取りまとめる。2. 水文-凍土G:引き続き、ロシア・モンゴルでの、サーモカルスト湖、活動層土壌水などの水サンプルの取得を進め、地下水流動中の凍土融解水の効果を推定する。表層の凍土融解と土壌水分変動、サーモカルスト湖の水域変化。3. 空間分布G:ALOS、ALOS-2、Cosmo-Skymed、LANDSAT8による凍土荒廃(地形変化)・森林荒廃・水域変化域の検出の広域解析を進める。後方散乱係数解析やInSAR解析によって、凍土温暖化、融解に伴う植生・水域・地形変遷を評価し、GISデータ化して取りまとめる。モンゴルの広域凍土分布観測データを利用し、凍土変化と地表面景観との対応関係について広域解析を進め、最新の凍土分布確率のGIS化を進めて取りまとめる。4. 広域モデルG:引き続き文献資料や、観測データに基づく、植生・土壌・凍土の諸パラメータ化をすすめ、活動層厚、表層の地温・土壌水分分布の数値実験を行い、地表面状態、表層土壌の有機物堆積量などを考慮した凍土変化に関する結果をとりまとめる。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (16件) (うち国際共著 4件、 査読あり 14件、 オープンアクセス 7件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (38件) (うち国際学会 17件、 招待講演 2件)
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