研究課題/領域番号 |
26242031
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
木村 玲欧 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (00362301)
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研究分担者 |
秋冨 慎司 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 救急部, 准教授 (00509028)
林 春男 京都大学, 防災研究所, 研究員 (20164949)
田村 圭子 新潟大学, 危機管理本部, 教授 (20397524)
鈴木 進吾 国立研究開発法人防災科学技術研究所, その他部局等, 主幹研究員 (30443568)
大友 章司 甲南女子大学, 人間科学部, 准教授 (80455815)
立木 茂雄 同志社大学, 社会学部, 教授 (90188269)
井ノ口 宗成 静岡大学, 情報学部, 講師 (90509944)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生活再建過程 / 復旧・復興 / 災害過程 / 自然災害 / 危機管理 / 防災 / 地震 / 津波 |
研究実績の概要 |
本研究は「生活再建過程学」の構築を目指すものである。研究者と被災自治体とのアクション・リサーチ研究によって、災害発生後10年を見据えた長期的生活再建過程を理論化し、マクロ指標や特定の声ではないサイレント・マジョリティ(声なき声)としての被災者全体の生活再建状況や課題を可視化し、被災者・被災地視点の「新しい東北」の復興工程の実証を行うものである。 本年度は、昨年度末に実施した無作為抽出に基づく量的社会調査の分析を行い、東日本大震災の復旧・復興の現状と課題について、過去の災害事例における生活再建過程との比較検討を交えながら考察を行った。被災者の復興実感について震災から5年を経ても4分の1は被災者意識を持ち、半数以上が地域経済が戻っていないと考えていることがわかった。また、時間経過における生活再建過程について岩手県・宮城県・福島県を比較すると、岩手県と宮城県では大きな違いは見られなかったが、福島県は岩手県・宮城県よりも全体的に遅れている傾向が見られた。特に安全性や生活継続性について大きな違いが見られた。 東日本大震災と、阪神・淡路大震災の生活再建過程を比較したところ、住まい再建の問題解決、家計への影響解決、地域経済の影響解決について、東日本大震災の方が阪神・淡路大震災よりも早く生活再建が進んでいた。東日本大震災は広域に被害・影響が発生した災害であり、被災地によって被害・影響の程度には差があることは当然であるが、被災地全体では阪神・淡路大震災と同じかそれよりも早いかたちで被災者の生活復興は進んでいることが考えられる。また生活再建過程の傾向について、新潟県中越地震、新潟県中越沖地震の調査でも同様の傾向が見られ、海溝型地震災害と内陸型地震災害、大都市部と地方都市・中山間地等という、災害や地域の違いにかかわらず被災者・被災地の生活再建過程の共通性の存在を導出することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画にあった、内陸直下型地震・海溝型地震等の既存研究を整理した上で、東日本大震災での復興状況と比較検討をしながら、無作為抽出に基づく量的社会調査の分析・検討を行った。分析・検討を行う際には、東日本大震災の生活再建実態を明らかにするとともに、阪神・淡路大震災やその他の地震災害との生活再建実態との比較分析することで、生活再建過程の一般性の検討を行った。多岐にわたる分析において、特に生活再建過程について、東日本大震災と、阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、新潟県中越沖地震を比較検討し、海溝型地震災害と内陸型地震災害、大都市部と地方都市・中山間地等という、災害や地域の違いがあるものの、災害から立ち直る被災者・被災地の生活再建過程には共通性が存在することを明らかにしたことは特筆すべき成果である。 ただし東日本大震災を対象とした無作為抽出に基づく質問紙調査は前年度の1回(震災から5年)だけであり、結果の再現性を検討するためには、もう1度、同じ手法に基づく質問紙調査を行う必要がある(当初計画どおり)。次年度は、震災から7年における質問紙調査を実施し、結果の再現性を検討するとともに、前回調査から更に2年が震災から7年時点における生活再建過程を明らかにしていき、生活再建過程の体系化を検討していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、実査した量的社会調査の分析、過去の災害事例との比較検討を行いながら、震災から7年が経過した東日本大震災における被災地・被災者と復旧・復興の実態について社会調査等の手法によって明らかにするとともに、生活再建過程の体系化についても検討を行いたい。巨大災害からの生活再建過程は長期的にわたるものであり、生活再建過程の構成要素の1つである「住宅再建」について、阪神・淡路大震災では5年で解消した仮設住宅が、東日本大震災では7年目を迎えても解消できずにいるなど生活再建過程の長期化も予想される。 次年度においては、東日本大震災から7年の時点での生活再建状況を明らかにするとともに、過去の災害事例と比較検討しながら今後どのような復旧・復興のあり方が必要とされているかについて、明らかにしていきたい。特に本研究課題である「サイレントマジョリティ(声なき声)」について、ある特定の状況下におかれた被災者だけではなく、被災地全体・地域全体の生活再建過程がどのような現状にあり、今後、どのように経緯していくのかについての見通しについても、生活再建過程の体系化をとおして検討していきたい。
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