研究実績の概要 |
平成28年は、ゼブラフィッシュの腸内流動を数理モデル化し、蠕動運動のポンプ機能と攪拌機能を解明した(J. Yang, et al., J. Theor. Biol.)。次に、腸内細菌の増殖を数理モデル化し、腸内フローラシミュレーターを開発した。また、ゼブラフィッシュの腸内流動の可視化実験も行い、シミュレーション結果の妥当性を検証した。さらに、応用技術として、赤血球を壁面から遠ざけ、血漿層を厚くする壁面微細構造を開発した(M. Saadatmand, et al., J. Biomechanics)。この成果は、血管内に挿入する医療機器の血栓生成を抑制する技術などに応用できると期待される。また、バイオチップの流路形状と、流路内の細胞挙動を高解像度で同時計測する顕微鏡技術の開発にも成功した(Y. Kawano, et al., PLoS ONE)。
細胞スケールの研究も昨年度に引き続き行い、赤血球が血管内で軸集中するメカニズム(S. Nix, et al., J. Biomech.)や、重力が赤血球に及ぼす影響(D. Matsunaga, et al., J. Fluid Mech.)を解明した。さらに、得られた知見を病理学にまで展開し、マラリア感染赤血球が血管壁に接着するメカニズム(S. Ishida, et al., Sci. Technol. Adv. Mater.)や、がん細胞の接着過程(N. Takeishi, et al., Amer. J. Physiol.)を解明した。メゾスケールの研究では、マウスの気管の繊毛運動が作り出す流れ場を解明した(K. Kikuchi, et al., Anna. Biomed. Eng.)。マクロスケールでは、胃内の攪拌現象を解明した(T. Miyagawa, et al., Amer. J. Physiol.)。
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