研究課題
本研究の目的は,迷走神経刺激療法 (VNS) による脳活動の調整機能を明らかにし,さらに新たな利用方法を探索することである.具体的には, (i) 大脳皮質内の神経活動や皮質・視床の相互作用に対して,VNSが及ぼす影響を調べ,てんかん発作の発生と抑制のメカニズムを明らかにすること,(ii) VNSによる神経活動の調整が,知覚・認知と記憶・学習機能に及ぼす影響を調べて,VNSと音学習を併用した耳鳴治療 (TRT) の可能性を探索することである.動物実験では,ラットに強大音を曝露することで,耳鳴様行動を示す個体を作り,その聴覚野の活動を調べた.その結果,聴覚野の特定部位の同期が,耳鳴様行動の指標と相関することがわかった.また,VNSによる聴覚野の同期の調整も調べたところ,音刺激に対して,表層の同期が亢進し,深層の同期が低下することがわかった.さらに,これらの音の聞こえを定量化するために,ラットの音嗜好性を調べられる行動実験系を確立した.臨床研究では,VNS刺激の即時的効果について,頭蓋内電極およびNIRS(近赤外線分光法)を用いて調べた.頭蓋内電極抜去時にVNS植込を行った難治性てんかんの患者の術中脳波計測においては,VNS刺激の有無による皮質脳波および単一ニューロン活動の変化を確認した.VNS植込後慢性期の患者におけるNIRS計測では,VNS刺激による血流上昇は観察されなかったが,認知課題中にVNS刺激を行うことにより有意な血流上昇が得られることが確認された.またこの血流変化はVNS治療反応群でのみ有意であり,VNSの治療効果との関連が示唆された.さらに本邦における薬剤抵抗性てんかんに対する迷走神経刺激療法の使用成績をまとめて報告するとともに,診療ガイドラインを作成した.
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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