研究課題/領域番号 |
26242044
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
山越 憲一 昭和大学, 医学部, 客員教授 (40014310)
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研究分担者 |
李 知炯 福岡工業大学, 情報工学部, 助教 (10735583)
山越 健弘 福岡工業大学, 情報工学部, 准教授 (70444205)
加藤 祐次 北海道大学, 情報科学研究科, 助教 (50261582)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生体光情報計測 / パルス・グルコメトリ / 非侵襲光学的血糖計測 / 側方散乱光電容積信号検出法 / 多波長レーザー光電容積信号計測システム / グルコース吸光波長帯域 / 光散乱現象 / 糖尿病 |
研究実績の概要 |
平成28年度は,研究計画書で記載した次の2項目について研究を実施し,以下の成果を得た。 (1) 多波長光計測システムの試作開発と改良研究 血糖値(BGL)に吸光特性を持つ波長域(1500~1750nm)は、組織内水分の吸光が著しく高く、従来の透過又は反射方式の光電容積信号(PPG)計測は殆んど不可能に近い。しかし、この波長域でのPPG計測は、本研究目標の達成に不可欠な重要課題である。平成28年度は、前年度までに得た積分球式光検出法(PLoS One, 10(12), e0143506, 2015)をさらに発展させ、実用に供し得る簡便法を考案した。すなわち、レーザー光源(LD)と光検出センサ(PD)の配置関係を試行錯誤で種々に変えてPPGが計測できる至適配置(LDとPDを直交配置し、両者の物理的光路長が4~5mm)を見出し、本手法を側方散乱PPG検出法(side-scattered PPG detection: ssPPG)と命名した(現在、学術誌に投稿中)。更に、これまでの知見から選定された波長(1550, 1600, 1650, 1700, 1750 nm)と参照波長として1160 nmの6波長を用いた多波長PPG計測システムを試作開発した。 (2) ヒト手指を計測対象とした実験的検討と性能評価 開発した 6-chPPG計測システムを用い、ヒト指尖部での計測を実施したところ、全てのチャンネルでssPPG法は安定計測可能であることが実証された。現在、この知見をさらに発展させ、BGL計測の高精度化のために、光吸収特性と光散乱現象を利用した新たなPPG検出法の検討を、平成29年度実施に向けて追求しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の最終ゴールは小型簡便な方法で血糖値(BGL)を非侵襲計測する実用装置開発であり,本研究開発はその実用化への基礎資料を提供することを視野に研究計画を立案した。平成28年度は,前年度までに得た世界初の積分球式PPG検出法(PLoS One, 10(12), e0143506, 2015)の成果に基づき、実用に供し得る新なる簡便法を考案し、ヒト指尖部を用いた実験で、その有用性を世界で初めて実証したことは大きな成果である。すなわち、レーザー光源(LD)と光検出センサ(PD)の配置関係を試行錯誤で種々に変えてPPGが計測できる至適配置(LDとPDを直交配置し、両者の物理的光路長が4~5mm)を見出したことは極めて高く評価できる。この手法を側方散乱PPG検出法(side-scattered PPG detection: ssPPG)と命名し、現在、インパクトファクターの非常に高い学術誌に投稿中である。 一方,前年度までに得たBGL計測に用いる光波長(1550, 1600, 1650, 1700, 1750 nm)、及び参照波長として1160 nmの6波長レーザーPPG計測システムを用い、ssPPG法でPPGを同時計測できたことは世界初であり、非常に大きな成果である。 さらに、ssPPG法は組織を伝搬してきた散乱光を効率よく細動脈領域のPPGを検出する方法であり、この成果をヒントに散乱光のうち、ほぼ直進光(準直進光)が検出できれば、BGL濃度変化に感度良く反応し、BGL計測の高精度化に繋がるという新たな構想が得られたことは、当初期待していた以上の成果である。 以上より,本研究はほぼ当初計画通りに順調に進展しており,期待していた以上の研究成果も達成し、今後の発展が期待できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の成果を踏まえ、平成29年度は最終年度であることを鑑み、研究総括を進める一方、前述の新たな構想、すなわち、散乱体である生体組織内を伝搬してきた準直進光成分のPPG検出法を考案・開発し、これまで検討してきた光吸収現象に基づくPPG検出と光散乱現象を利用した準直進光成分PPG検出を複合化した、ハイブリッド方式パルス・グルコメトリの開発を推進する。 このハイブリッド方式は、これまで世界的にも全く考えられていない方法であり、高速偏光変調器を応用すれば準直進光成分のPPG検出は可能であり(予備実験で基本事項を検証済み)、ssPPG法と併用すればBGL計測の高精度化、そして本研究開発の最終ゴールである実用開発に大きく前進すると考えている。すなわち、平成29年度は今後の新なる発展的実用開発のための基盤構築に向けた研究を推進していきたい。
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