研究課題/領域番号 |
26242049
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
河野 健司 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90215187)
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研究分担者 |
青木 伊知男 独立行政法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, チームリーダー (10319519)
宇高 恵子 高知大学, 医歯学系, 教授 (40263066)
冨田 章裕 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80378215)
弓場 英司 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80582296)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 薬物送達システム / ナノ医療 / がん治療 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、オールインワンナノデバイス作成のための機能素子として、種々の機能性デンドロン脂質及び非対称構造デンドリマーの合成を行った。加温によって表面特性や集合体構造を転移するデンドロン脂質として、オリゴエチレングリコール末端を有するデンドロン脂質を合成し、その分子集合体の特性について検討した。そして、ホスファチジン酸などのアニオン性リン脂質やポリエチレングリコール脂質との超分子集合体化によって、所望の温度、pH領域において鋭敏に構造転移するデュアル応答型ベシクルの開発に成功した。このベシクルを用いることで、抗癌剤ドキソルビシンを標的細胞内部に効率よく導入できることを明らかにした。また、ポリエチレングリコール末端を持つデンドロンとリポ酸を末端にもつデンドロンを連結した非対称構造デンドリマーを合成し、その金とのナノハイブリッド作成について検討した。その結果、非対称デンドリマーと塩化金酸イオンの混合比を調節することで、サイズと形状の異なるハイブリッドナノ粒子を生成できることを明らかにした。このナノハイブリッドは、光線温熱治療デバイスとしての有用性が明らかになり、また、抗癌剤の組み込みによる光線温熱化学治療という新しいナノ治療への展開が可能であることを示した。一方、これまで開発してきた温度応答性リポソームに悪性リンパ腫特異性リガンドとして抗CD20抗体であるリツキシマブを導入し、標的がん細胞との相互作用について検討した。その結果、このリポソームは、リガンドを持たないリポソームに比べて、10倍程度高効率に標的細胞に結合して抗癌剤を導入できることがわかった。また、pH応答性高分子修飾リポソームの抗原デリバリーシステムとして機能について検討し、樹状細胞内部への抗原デリバリーにより効率よく細胞性免疫を誘導することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、オールインワンナノ治療デバイスのための機能素子の合成とその機能評価および、これまで開発してきた温度応答性リポソーム、デンドロン脂質ベシクル、pH応答性リポソーム、金ナノハイブリッドへの適用について検討を進めた。温度応答性デンドロン脂質や金ナノ粒子の生成と機能化を同時実現する非対称デンドリマーの合成、およびこれらを用いたデュアル応答性ベシクル、機能性金-デンドリマーナノハイブリッドの作成に成功している。特に機能性金-デンドリマーナノハイブリッドを用いることで、光線温熱化学治療という新しい癌治療技術への展開の可能性が示され、ナノ治療の発展に寄与できるものと期待される成果が上がった。また、温度応答性リポソームへの抗体医薬のハイブリッド化によるがん細胞特異性の飛躍的向上に成功し、また、pH応答性高分子修飾リポソームによる細胞性免疫誘導に成功した。これらの結果は、本プロジェクトの目的であるオールインワンナノ治療デバイスの開発に向けて重要な足がかりとなるものである。これらのことから、当初研究目的は、順調に達成されているということが出来る。
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今後の研究の推進方策 |
本年度、機能性素子としてのデンドリマーやデンドロン脂質の開発に成功した。この素子群を用いることで機能性ナノ粒子の開発を行っていく。また、機能性金デンドリマーハイブリッド、抗体医薬・温度応答性リポソームハイブリッドおよびpH応答性高分子リポソームの治療デバイスとしての性能や有用性を、細胞実験や動物実験を中心に検討を進め、これらの治療デバイスの光線温熱治療、光線温熱化学治療、悪性リンパ腫診断治療、がん免疫治療への展開を進めていく予定である。
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