研究課題
平成27年度は、オールインワンナノ治療デバイスとして、温度応答機能、MRIや近赤外外蛍光イメージングによる可視化機能に加えて標的病巣がん細胞へのターゲティング機能を持たせるために、腫瘍血管内皮細胞に特異性をもつcRGDを結合した多重機能リポソームを作製し、担癌マウスを用いた治療効果について検討した。その結果、cRGDを持たないリポソームに比べて、効果的に腫瘍組織に集積し、また、加温して抗がん剤を放出されることで効果的な腫瘍成長阻害効果が見られた。さらに、従来型の脂質相転移を利用した温度応答性リポソームおよび本研究で開発したポリマー修飾型リポソームをベースとしたcRGD結合多機能型リポソームによる担癌マウスの治療効果を比較し、本研究で開発のリポソームがより優れた腫瘍成長抑制効果を示すことを明らかにした。また、金ナノロッドと非対称デンドリマーからなるオールインワンナノベクターの開発に取り組み、粒径40nm程度の金ナノロッドと2鎖型非対称カチオニックデンドリマー(デンドロン脂質)を複合化させたナノハイブリッドを作製した。このナノハイブリッドは、プラスミドと効率よく複合化し、また、細胞に取り込まれて遺伝子発現に導いた。また、近赤外光を照射すると、遺伝子発現量が増大したことから、光応答型遺伝子ベクターとして機能することがわかった。さらに、オールインワンナノワクチンとして、pH応答性基を導入した多糖誘導体被覆リポソームを作製し、特にアジュバント活性を有する多糖誘導体を用いることで、効果的な樹状細胞活性化とCTL誘導活性を示し、担癌マウスを用いて腫瘍成長抑制効果を発現することを明らかにした。また、アジュバント活性を有するMPLAを含有したpH応答性ポリマー修飾リポソームをペプチドワクチンのデリバリーシステムとして用いるとCTL誘導効率が増大することも明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度は、オールインワンナノ治療デバイスとして、①多機能型リポソーム、②デンドリマー金ナノロッドハイブリッド、および③pH応答性リポソームワクチンキャリアについてその性能の先鋭化と治療効果の評価について研究を推進した。①では、可視化機能、温度応答機能に加えてターゲティング機能の有効性を明らかにするとともに、従来型のリポソームに比べて、優れた治療特性を有することを明らかにすることができた。②については、ナノハイブリッドの遺伝子ベクターとしての優れた特性と遺伝子発現の光制御の可能性を明らかにすることができた。さらに、③では、多糖を用いることで生体使用に適した特質を有するシステムの開発に成功した。また、ナノシステムを用いることでペプチドワクチンの効果を増強することにも成功した。これらの結果は、本プロジェクトの目的であるオールインワンナノ治療デバイスの有用性を明らかにする重要なものである。これらのことから、当初目的は順調に達成されているということができる。
本年度、多重機能性リポソームやデンドリマー金ナノロッドナノハイブリッドをベースとするオールインワンナノ治療デバイスおよびpH応答リポソームをベースとするオールインワンナノワクチンの構築に成功した。次年度は、これらの治療デバイスのがん治療デバイスとしての有用性を、動物実験を中心に進めていく予定である。特に、悪性リンパ腫特異的なリツキシマブを導入したオールインワンナノデバイスによる悪性リンパ腫診断治療と前立腺がんペプチドとオールインワンナノワクチンのコンビネーションによるがん特異的CTLの誘導について研究を進める予定である。
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