研究実績の概要 |
本研究では, ヒトのリンパ節の大きさ(短径約10 mm)までリンパ節が自然に腫脹するリンパ節腫脹マウスを使用して, 微小転移期にある転移リンパ節を対象に, 造影高周波超音波とナノ・マイクロバブルと超音波を用いたリンパ行性薬剤送達法を開発し, 超早期リンパ節転移診断・治療システムに展開することを目的とする. 本年度は, ナノ・マイクロバブル(音響性リポソーム)と超音波を用いたリンパ行性薬剤送達法により微小転移期にある転移リンパ節に悪性リンパ腫や乳がんの治療で使用されているドキソルビシンを腫瘍細胞に導入し, 抗腫瘍効果を評価することを目的にする. まず, マウスの固有腋窩リンパ節に腫瘍細胞を移植し, つぎに固有腋窩リンパ節のリンパネットワーク上流に位置する腸骨下リンパ節に音響性リポソームとドキソルビシンの混合液を注射し, リンパ行性薬剤送達法により固有腋窩リンパ節内の腫瘍を治療する方法論をとる. 腸骨下リンパ節から固有腋窩リンパ節に向かう混合液のリンパ管内の流れを造影高周波超音波で可視化し, 混合液が固有腋窩リンパ節の辺縁洞を走行して内部に入り込む現象が確認された. この状況下で破壊用超音波を固有腋窩リンパ節に照射し音響性リポソームを破壊することで, 固有腋窩リンパ節の腫瘍体積減少, 血管密度低下, 固有腋窩リンパ節の体積減少が確認され, 効果的な抗腫瘍効果が得られた. マウスの体重減少は見られずリンパ行性薬剤送達法による副作用は発生しないものと判断された. 音響性リポソームとドキソルビシンの混合液を尾静脈に注射し, 混合液が固有腋窩リンパ節に送達された段階で破壊用超音波を照射しても, 顕著な抗腫瘍効果は確認できなかった. リンパ行性薬剤送達法は転移リンパ節の効果的な治療法であり, 今後の臨床応用が期待される.
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