研究課題/領域番号 |
26242055
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
堤 康央 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (50263306)
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研究分担者 |
井上 豪 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20263204)
角田 慎一 独立行政法人医薬基盤研究所, その他部局等, その他 (90357533)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 検査・診断システム / 抗体 / 心不全 / イメージング |
研究実績の概要 |
本研究では、国民病ともいえる心不全を例に、プロテオミクスなど活用して診断用バイオマーカーを同定したうえで、高親和性の抗体を創製することで、心不全に対する有用な体外診断法を開発することを目的とする。 上記の目的を達成するために本年度は、心臓冠血管の出口である冠状静脈洞血(CS血)と、冠血管の入口の血液として大腿動脈血(FA血)を対象に、各血液からCS血で発現上昇している蛋白質を網羅的に探索した。一般に、血清中に多量に存在するアルブミンなどの蛋白質(mg/ml)が、目的の蛋白質(ng-pg/ml)同定の妨げになることが知られている。そこでまず、効率よく微量蛋白質を同定するために、抗体カラムを用いて血清中の多量蛋白質を除去し、その除去効率について評価した。SDS-PAGE解析の結果、未処理のサンプルでは、アルブミンなどの多量蛋白質のバンドが多く観察された一方、処理後のサンプルでは、これらバンドは消失し、未処理サンプルでは観察できなかった多数のバンドが確認された。そこで次に、iTRAQ解析により、発現変動蛋白質の同定を試みた。その結果、合計668種類の蛋白質が同定され、特に、CS血清で2倍以上発現上昇している蛋白質が4種類見出された。これら蛋白質は、抗菌蛋白質や酵素蛋白質として報告されているものの、興味深いことに、心臓からの分泌や心機能に関する報告はなく、新たな心分泌関連バイオマーカーとなり得ることが期待される。 一方で、診断用バイオマーカーが同定された際に、円滑に高感度検出系を構築できるように、抗体の親和性向上技術のマチュレーションを図った。既に、X線結晶構造解析に成功している抗原-抗体の3次元立体構造情報をもとに、変異導入し、熱力学的パラメーターの変化を解析した。その結果、Hot Spotの遠隔の位置での変異導入が抗体の安定性・親和性向上にとって有効であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書の研究実施計画で記載した通り、プロテオーム解析によって、候補となる発現変動蛋白質を見出すことができているため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に見出した4種類の候補蛋白質について、western blotting法やELISA法といった別法により、発現量の違いを検証する。また、上記の結果は、1症例に対するプレリミナリーな結果であるため、症例検体数を増やすことで心不全バイオマーカー候補蛋白質としての確度を高める予定である。さらに、様々な血清中多量蛋白質除去法も考慮・評価することで、心分泌関連バイオマーカーの候補を増やす予定である。 また、高感度検出系の構築に向け、X線結晶構造解析するための蛋白質の結晶化技術の開発など、抗体の親和性向上に関わる基盤技術の進展を図る。
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