研究課題
本研究では、国民病ともいえる心不全を例に、プロテオミクスなどを活用して心不全の早期診断・病態診断に叶う診断用バイオマーカー蛋白質を同定したうえで、高親和性の抗体を創製することで、心不全に対する有用な体外診断法を開発することを目的とする。代表者は、昨年度までに、心臓の前後血清を用いたプロテオーム解析の結果から、細胞骨格関連蛋白質が心分泌蛋白質候補になり得ることを見出すと共に、心不全モデルマウスの血中において、その発現量が増加することを示してきた。さらに、本年度の研究において、細胞骨格関連蛋白質の血中量の増加と、モデルマウスの心臓での線維化率の増加との間に正の相関が認められることを明らかとし、心不全の病態を反映し得る新規バイオマーカーとなり得ることを示した。そこで本年度は、これら候補蛋白質について、ヒトでの発現変動を評価するため、健常者血清と心筋症患者血清中における候補蛋白質の定量解析を実施した。その結果、細胞骨格関連蛋白質が、一部の心筋症患者の血中において増加傾向を示すことを見出し、ヒトにおける、心不全バイオマーカーとしての可能性を見出してきた。今後、より多症例の患者血清を用いた、心不全バイオマーカーとしてのバリデーションを図ると共に、心筋症患者間で変動が認められたことについて、患者のフェノタイピング情報との連関を試みる。また、心不全のモデル動物や細胞を用いることで、候補蛋白質の心不全における発症・悪化におよぼす機序解明にも試みる。これら検討を進めることで、心不全に対する診断バイオマーカーの確立、ひいては、新規診断システムの構築に資する情報の集積を進めていく。
2: おおむね順調に進展している
計画した内容に沿って、研究が進行しているため。
今後、心分泌蛋白質としての可能性が示された蛋白質については、より多症例の心不全患者サンプルを対象に、心筋トロポニンやBNPといった既存のバイオマーカーと比較しつつ、患者の病態履歴情報と照らし合わせながら、心不全バイオマーカーとしての有用性を精査していく。また、得られた疾患関連バイオマーカー蛋白質については、モデル動物や細胞を用いることで、分子病態学・分子生物学的な機能解明を試みる。
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J. Controlled Release
巻: 260 ページ: 183~193
10.1016/j.jconrel.2017.06.007