研究実績の概要 |
今年度の研究実績は以下のとおりである。 (1)脳状態に依存した運動記憶の形成と運動記憶の外的操作可能性:ロボットマニピュランダムを用いて、新奇力場をハンドルに課した状態で到達運動するという運動学習実験を行った。tDCS電極を左・右一次運動野に配置し、左一次運動野を陽極刺激時には時計回り(もしくは反時計回り)、陰極刺激時には反時計回り(もしくは時計回り)の力場をかけたトレーニングを行ったところ、陽・陰極刺激によって実現された脳状態に依存した別々の運動記憶が形成された。しかし、tDCSを後部頭頂葉に与えた場合には、このような極性依存性の運動記憶の形成は生じなかった。この結果から、運動記憶は一次運動野の状態依存性に形成されること、その状態を再現してやれば自動的に対応する運動記憶が蘇ってくること、すなわちヒト運動記憶を人為的に操作できることが明らかとなった(Nozaki et al., eLife 2016)。
(2)脳状態に依存して形成される運動記憶の脳内表象:開発したfMRI内で使用可能なロボットマニピュランダムのシステムを用い、手首を動かしてカーソルをターゲットに動かす到達運動実験を行った。高知工科大学総合研究所所有のMRI (Magnetom Verio 3T (Siemens, Germany)を用い、左一次運動野に陽極、陰極のそれぞれのtDCSを受けながら手首運動を行ったとき、運動に関連して賦活する脳部位がどのように変化するかを検討した。解析にはRepresentational Similarity Analysis(RSA)を用い、運動に応じて賦活するボクセルの活動パターンが陽極、陰極刺激でどの程度異なっているかを調べた。その結果、刺激電極直下の一次運動野でその違いが最も大きいことから、全く同じ手首運動にもかかわらず、一次運動野の神経細胞が異なったパターンで動員されていることが示唆された。
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