研究課題
治療過程や再発、増悪、軽快といった臨床的分岐点における行動・心理動態・報酬系機能の変容を捉えるため、昨年度に引き続き双極性障害患者と大うつ病性障害患者の回復過程における長期連続計測を実施し、開発した行動指標の有用性・精神医学的妥当性の検証を行った。一方、ハイデルベルク大学との共同研究で、精神疾患との合併率が高いアルコール依存症のラットモデルの長期連続飲酒行動および自発活動データの解析を行い、依存症の成立過程における行動変化とそれに基づく発症兆候(早期警戒信号)の検知可能性について検討した。具体的には、異なる濃度(5%、10%、20%)のアルコールと水を常時自由に摂取可能な環境に暴露されたラットは、自発的・日常的にアルコールを摂取するようになるが、一定期間後(本研究では約2か月)に、2週間程度の断酒期間を設けると、元の環境に戻した際に断酒前よりも高濃度のアルコールを安定的に好んで摂取するようなる(アルコール依存症の成立)。この過程を何度も繰り返すとさらに依存症の安定度が増す。依存が成立するとされる最初の断酒後までのデータを解析したところ、依存成立後に、ヒトうつ病患者と同様に身体活動の行動指標γの低下や概日リズムの変化が確認された。さらに依存症が成立する断酒期間中は、活動データにおける概日リズムの安定性が低下し低周波のゆらぎ(ウルトラディアンリズム)が顕著になることを確認した。これらは、依存という新たな安定状態への遷移において、早期警戒信号としての(臨界)減速現象が存在することを示唆する。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Frontiers in Psychology
巻: 8 ページ: 16-1-14
10.3389/fpsyg.2017.00016