研究課題/領域番号 |
26242087
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
春野 雅彦 国立研究開発法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳情報工学研究室, 研究マネージャー (40395124)
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研究分担者 |
二本杉 剛 大阪経済大学, 経済学部, 准教授 (10616791)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脳情報 / 扁桃体 / デコーディング / 社会行動 / 7TMRI |
研究実績の概要 |
本研究では皮質下領域の脳活動(主に7テスラ、3テスラ装置のfMRI信号)から社会行動に関する情報を解読する手法を開発し、計算論的神経科学と行動経済学の分野間協力で開発した手法を将来のストレス予測や経済行動予測に応用することを目指す。本年度は皮質下の扁桃体の7TMRI信号からのデコーディング手法の確立に注力し、顔の表情判断課題を用いて (1)個人内でDecoderの学習に必要な試行数の見積と制度の評価 (2)各個人のデータを集めて学習するための手法の確立と評価 を行った。その結果、個人内で作成したDecoderでは信頼性高く恐怖・幸福の顔表情を解読することが難しいことが分かった。そこで、従来は大脳皮質に視覚情報のDecodingに適用されてきたHyperAlignment法を7テスラの扁桃体fMRI信号に適用することを試みた。この方法によりHyperAlignmentにより変換された共通空間上で10人の被験者して顔表情を弁別できる脳活動パターンの探索を行った。その結果、ランダムな推測では50%の分類精度となる条件で70%以上の分類精度を達成できた。さらに、分類精度と時間タイミングを詳細に分析したところ、分類精度のピークが顔提示後1秒と6秒後にあることが判明した。これらの弁別に貢献したボクセルのBOLD信号を分析したところ、1秒ではBOLDのinitial dipの情報が使われており、6秒ではBOLDのhemodynamic関数のピーク辺りの情報が使われていた。このように本年度は、7TfMRIの信号を用いて被験者に共通するdecodingを可能にするとともに、扁桃体のinitial dipが顔表情に関する情報を含むことを見出した。 データはパスワードのあるコンピュータで処理しデータや処理結果の流出がないように管理する。研究成果発表の際、被験者個人を特定できる情報は一切公開しない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
従来我々が試みてきたBOLD信号の標準化に基づく方法で、自分と他者が受け取る報酬の不平等が扁桃体と海馬に誘発する脳活動パターンから、これまで不可能であった現在及び未来(1年後)のうつ病傾向を予測することが可能となる新たな成果を論文として世界に発信することができた。これは多くの被験者に共通するパターンの抽出に相当する。 さらに、新たに開発したhyper-alignmentに基づくdecoding手法により、7TfMRIの信号を用いて被験者に共通するdecodingを高い精度で可能にするとともに、扁桃体のinitial dipが顔表情に関する情報を含むことを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
7TMRIを用いたhyper-alignmentに基づく扁桃体の脳活動パターンからのデコーディング手法を確立し、論文化する。つぎにこの手法を経済格差に対する脳活動パターンに適用し、様々な精神疾患結構の予測を試みる。 研究分担者である二本杉が課題のデザインを担当した罪悪感を計測する実験に見られる男女差について論文化するとともに、罪悪感に関係する脳活動パターンと精神疾患の関係の分析を開始する。またこれらの考察から経済格差と罪悪感の共通点、相違点についても明らかにする予定である。
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