研究課題/領域番号 |
26242088
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
長谷川 功 新潟大学, 医歯学系, 教授 (60282620)
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研究分担者 |
奥田 修二郎 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (00512310)
谷川 久 新潟大学, 研究推進機構, 准教授 (40373328)
中原 潔 高知工科大学, 総合研究所, 教授 (50372363)
神谷 之康 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 研究室長 (50418513)
河野 剛士 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70452216)
鎌田 恭輔 旭川医科大学, 医学部, 教授 (80372374)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マカクザル / 皮質脳波 |
研究実績の概要 |
Aマカクザル下側頭葉における局所伝達エントロピー(Local Transfer Entropy: LTE)の定量化、B視覚野周辺抑制における微視的皮質回路の再帰的信号処理、C 記号の分節化を担う前頭前野の機能分化と情報処理の流れ、D 社会認知における脳内の情報流、E視覚イメージ想起における側頭葉と前頭葉の階層的信号の流れ、という5つの下位目標に沿って実験・解析を進めた。Aでは、同一の領野である下側頭葉皮質に形成される機能的ネットワーク(情報流ネットワーク)であっても、順行性と逆行性のネットワークでは情報トポロジーに違いかあること、情報の分離と統合の仕方に違いがあることを明らかにした。逆行性のネットワークはより大域的な情報を統合する性質をもつことがわかった。Bでは、前年度に得たラット1次視覚野の周辺抑制の時空間的周期構造に関する知見を、頭数を増やして検証した。また視覚応答と光遺伝学的刺激の効果をECoG法で比較し、ECoGの空間分解能と視覚応答の伝搬に関して検討をおこなった。Cでは、物を見てそれを表す記号を想起したうえでその記号を要素に分節化する課題を遂行中のマカクザルの前頭皮質において、単に物から記号への変換や、視覚的に提示した記号の分節化では見られない低周波帯域の活動が認められた。Dでは、サルで視線認知の計測と、社会認知課題の行動訓練実験を進めた。Eでは視覚イメージの連想学習によるサル内側側頭葉におけるECoG空間パターンの変化について論文にまとめた(中原らNature Communications, in press)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
下位目標A-Eのそれぞれにおいて、ほぼ所期の計画通りに実験の進捗が認められ、これらの成果を、Nature Communications, Cerebral Cortex, Frontiers in Human Neuroscience, Scientific Reports, Journal of Neurosurgery誌を始め、計18報の英文論本を発表し、北米神経科学大会や日本神経科学大会等に計26題の学会発表を行った。以上の理由により、順調に進展している、と判断することができる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に試みた下側頭葉におけるフィードフォワードとフィードバック別のLTE定量化の解析を推し進め、再現性を確認する。データを追加取得・再構築し、理論的な考察をすすめ、実験結果に適用して論文の投稿・受理を目指す。Bでは、一次視覚野の再帰的信号処理について得られた知見に、相同のパラダイムによるスパイクレベルでの視覚野周辺抑制に関する実験を追加して整合性を考察し、論文の投稿・受理を目指す。Cでは、前年度までに得られた、前頭前野の前腹側部における物体視選択的神経活動から、弓状溝下部における物体・記号変換に関わる活動、さらに弓状溝後背側部における記号の要素分解に関連した活動、という情報の流れをについて定量的な解析により、投稿準備を進める。Dでは、社会認知課題を遂行中のサルの前頭葉内側部からのECoG計測と同時に視床枕から微小電極法による計測を行って情報流を解析する。このために必要な脳座標を定位的に計測する装置を導入する。Eでは、想起期間中における前頭葉・側頭葉の神経活動からのデコーディングの結果をまとめる。さらに、側頭葉から前頭葉へのフィードフォワード・前頭葉から側頭葉へのフィードバックの情報の流れを定量的に解析する。
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