研究課題/領域番号 |
26243003
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
林 行夫 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 教授 (60208634)
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研究分担者 |
柴山 守 京都大学, 国際戦略本部, 研究員 (10162645)
笹川 秀夫 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 教授 (10435175)
片岡 樹 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (10513517)
小島 敬裕 京都大学, 東南アジア研究所, 特別研究員(PD) (10586382)
小林 知 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 准教授 (20452287)
高橋 美和 愛国学園大学, 人間文化学部, 教授 (40306478)
藏本 龍介 南山大学, 人文学部, 准教授 (60735091)
長谷川 清 文教大学, 文学部, 教授 (70208479)
土佐 桂子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (90283853)
山田 協太 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, その他 (40434980)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 東南アジア / 地域情報学 / 上座仏教 / 宗教と社会 / 地域間比較 |
研究実績の概要 |
タイ、カンボジア、中国雲南省での6つの調査区画における補足調査およびミャンマーとスリランカでの3つの調査区画での悉皆調査をすべて無事に完遂して、多大な成果をもたらした。とりわけ臨地調査によるデータが欠落していたミャンマーの2つの調査区画での成果は、すでにデータの蓄積があるタイ、カンボジア、中国雲南省、ラオスのデータとの地域間比較の分析をより厚みのあるものにすることができたことは特筆に値する。本年度の調査全体で、寺院僧院施設 546か寺、出家者4535人分のデータが追加・更新された。また、同時に、フィールドワークで得た資料を地域と国家制度の文脈に位置づけるための統計、官報、センサス、制度関連資料の各国での蒐集は、各国で順調に推移した。タイでは、複数の大学研究機関と官公庁が参画するプロジェクトとして進みはじめた。 他方で、一次資料のデータ化には膨大な時間を費やすことになった。また、当初予定していた本計画全体の中間報告のための国際集会が諸事情により半年先に延期になった。国内集会を2度実施して相互の調査区画のデータ処理とファインディングスを共有するとともに、史資料についての地域間比較の軸を構築するために、各国の仏教実践と日本との歴史的な関わり、仏教をめぐる東南アジアと日本の交流について研究懇談会を実施した。これは、研究代表者の所属機関が主催する共同研究の活動をひきつぐかたちで実施し、その共同研究の成果を商業出版して公開することに貢献した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、上座仏教徒が造営する寺院施設を地域の文脈から類型化し、出家行動をふくむ寺院と人の移動が築くネットワークの様態を解明することを目的とする。2年目にあたる今年度の課題は、過去の調査でデータを蓄積する調査区画では最終的な補足調査、初年度に予備調査をしたミャンマーとスリランカ、およびタイ(華人仏教)では、前年度に確定させた調査区画での悉皆調査の実施と、個人史や地域ごとの変容を示すデータを蒐集することにあった。全調査区画で臨地調査は無事完遂された。ミャンマーではヤンゴン管区全体の雨安居僧籍表(約3,500僧院、約85,000僧)のデータベース化とマッピングの展望が開かれた。スリランカはキャンディ高原での出家動向が明らかになり、昨年度の2調査区画(コロンボとゴール)で得たデータと比較することが可能になった。補足調査を終えたカンボジアは2調査区画のデータ整備を進め、農村と首都近郊村との間にきわだった出家行動の相違を浮き彫りにした。中国雲南省の2調査区画では、激変する地域の社会経済状況のもと、寺院施設の整備状況や出家活動の変化が明らかになった。タイでは在来派の拠点であるバンコクの1寺院を集約的に調査し、都市の教学僧院に集住する地方出身の出家者の構成と出家行動の詳細を明らかにした。このデータは、半世紀前に米国の人類学者が実施した同寺院の調査結果と比較できるものとなる。また、20世紀初頭より全国寺院に配布され続ける寺院僧侶通覧『サンガ月報』で、散佚と損傷が著しい1960年までの同誌の蒐集と復刻、デジタル化にむけた調査と関連機関との交渉を重ねた。本科研のタイ側の研究協力機関であるチュラーロンコーン大学社会調査研究所とマハーチュラーロンコーン大学仏教研究所(MCBRI)と共同体制を築くこととなり、2016年3月4日にMCBRIは研究代表者の所属機関とMOUを締結した。
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今後の研究の推進方策 |
5か国にまたがる全11調査区画での調査が順調に推移したのみならず、統計文献資料も着実に蒐集ないし準備されつつあることは大きな進捗であった。同時に、量的にも大規模なものとなり、臨地調査の資料のみならず現地語資料をデータ化する情報処理作業に相当な時間を費やすことになった。補足調査で得たデータが、過去の調査で得たデータの評価や見直しも必要となる。GPSデータを反映する地名コードを加えて入力し、出家者の出身地、止住歴のある寺院の場所を可視化する作業をどの調査区画でも終えることが肝要となる。これを支えるかたちで、全区画の出家者の来歴と移動歴を示す「得度チャート」を作成、更新していく。また、移動の理由など、数値化しづらいナラティブなデータを類型分けして整理していく。国を超えた比較の前に、同一国内で異なる地域での特徴が明らかになりつつあるので、調査者間でのデータ共有を推進しつつ、国内からみえる比較分析の指標をとりだし、これを他国に敷衍して比較分析を拡大するための「論点」へとたたきあげていくことで、データの可視化作業もより実質的なものに絞り込むことになると展望する。 今年度に実施する予定であった成果報告を兼ねた国際会議は、開催機関(カンボジア王立芸術大学)側のやむをえない事情で、当初の3月から次年度の9月に延期されたのは想定外であったが、今年度のデータを盛り込むことで、より充実した成果の中間報告ができると期待されるので、データの情報化作業とともに、国際集会にむけた論点の構築のために国内集会を複数回実施することとした。
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