研究課題/領域番号 |
26244012
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館 |
研究代表者 |
湯山 賢一 独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館, その他部局等, その他 (00300690)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 春日信仰 / 春日曼荼羅 / 造替 / 神像 |
研究実績の概要 |
研究期間の初年度にあたり、次年度以降の本格的研究に向けた準備として文化財所在情報を収集するとともに、文化財の現地調査を順次実施し始めた。 彫刻分野では、26年8月30日から9月5日にかけて、アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス市のカウンティ美術館へ連携研究者3名を含む4名が赴き、神像彫刻等14件を調査した。その中には日本では未紹介のものも含まれている。調査においては最新のストロボ機器を使用した写真撮影を実施し、帰国後の継続的な研究に備えた。 絵画分野では、当館に所在する春日曼荼羅を中心に調査を実施するとともに、次年度以降の海外調査に向けて文化財の所在確認に努めた。工芸分野では、舎利厨子(4件)や春日一宮信仰の遺品(2件)、春日大社伝来の神宝(6件)、春日大社造替関係資料(2件)を調査するとともに、引き続き関連遺品の情報収集をおこなった。考古分野では春日大社境内出土の古瓦、築地遺構の出土瓦・土師器、御蓋山麓出土の須恵器を調査するとともに、春日東西塔跡出土品の整理に着手した。書跡分野では、当初計画には挙げていなかった春日社式年造替関係の未紹介資料について、断簡の復原研究を実施した。その結果、既知の資料の釈文訂正や転写関係の見直しが必要なことがわかり、次年度以降も研究を継続することになった。以上の調査および研究の成果の多くは、当館で開催の特別陳列「おん祭と春日信仰の美術【特集】威儀物―神前のかざり―」(12月9日~27年1月18日)において公開し、展示と同時に刊行した図録にも掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、文化財調査に必須の写真撮影関連機器および蛍光エックス線分析装置を設置することで、基本的な調査環境を整えることができた。それらの機器を利用した彫刻・絵画・工芸品等の調査を順次開始している。また、海外を含む現地での文化財調査にも着手し、今年度は海外調査1件に留まったが、次年度以降は、すでに決まっている海外調査もあり、春日信仰関係の文化財情報を広く収集できる見込みである。調査と研究の成果を当館開催の展覧会に繋げることもできており、研究計画全体としては概ね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、今年度に整えた基礎の上に、本格的な文化財調査(現地調査を多く含む)を実施する。具体的には、大英博物館での春日曼荼羅の調査、国内では根津美術館の春日若宮大般若経厨子の調査などがすでに決定している。そのほか最終年度までに複数件の海外調査を実施し、未紹介資料の発掘に努めるとともに、多数のサンプルに基づく総合的研究へと繋げて行く。また館内では、平安時代の春日社の景観復原に欠かせない春日東西塔跡出土品について、その本格的な整理を実施する(最終年度まで継続)。そして、今年度着手した春日造替関係資料については、当初想定していたよりも対象となる関連資料が多いため、次年度以降も継続することとする。 以上の調査および研究の成果を反映した展覧会は、次年度以降も毎年開催する。
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